大江橋クリニックは、生まれつきや外傷後の耳の奇形・変形、耳のできものなどを治して、耳の形をきれいにする手術を得意としています。
耳の形を気にして手術まで受けようと決心する方は少数です。目や鼻の形を気に病む方と比較すると百分の一以下でしょう。症例が非常に少ない分野であるため、多くの美容・形成外科クリニックのサイトではメニューに説明図はあっても、詳細な手術の説明や症例写真は少ないと思います。実際に手術を行ったことのある医師もそう多くないでしょう。形成外科学会の専門医は2,000名ほどですが、小耳症の手術を主に扱う「日本耳介再建学会」に出席する医師は例年20〜30人程度です。大学病院の形成外科でも、専門的に手術指導が行えるところは片手で数えるほどです。
現状では患者さんが適切な治療を受けられる機会は非常に少ないと思います。以下の説明が参考になれば幸いです。
以下、このページでは、大江橋クリニックで行っている耳(外耳・耳介)の手術治療について概略を説明しています。(それでもかなり詳しいです😅)
より詳しい説明や、手術以外の耳の治療については下の「特集ページ」を参照してください。このページにない情報も含め、詳しく🤓書いてあります。
大江橋クリニックで行った耳介形成手術の例(一部)
※ お決まり:写真は一例です。個人差があり、同様の仕上がりを保証するものではありません。
左から スタール耳、耳介血腫、耳介ケロイドの手術例です。いずれも開業から間もない10年以上前の、同種の症例の第1例目です。患者さん自身は大江橋クリニックで手術したことなど忘れているかもしれません。特に最善例というわけではありません。
最近の症例、特に現在も治療中のものは患者さんの都合もありまだ整理できていません。他にも様々な手術を行っています。(耳全体を小さく、耳たぶを大きく、ピアス耳切れ、複雑な先天的変形、他院の術後の変形、暴行による外傷、等々)症例写真はあまり多く出していませんが、徐々に追加していきます。手術に伴うリスクや治療の詳細については該当の項目をご覧ください。
大江橋クリニックではこのほかにもいわゆる柔道耳など外傷に引き続く変形や立ち耳、折れ耳、耳輪埋没症などの先天的なもの、耳のできものや副耳、美容的に耳の形を変える手術なども積極的に行っています。以下のリンク先の「耳介形成手術の基礎」のページは、この様な手術に関心のある医師の皆さんにも参考になるように、技術的なお話や術中写真も掲載しています。一般の方にはショッキングな写真もあるかもしれませんので閲覧する際には注意してください。
立ち耳の形成手術などは厚生労働省の見解(単に聳立した耳介を後方に倒す手術は、もっぱら美容を目的とする治療であって、健康保険の対象とはならない)に従い主に自費で行うことにしています。その他の先天性変形の中には症状により保険の効く場合もあります。単なる耳介形成手術(耳介軟骨形成を伴うものと、伴わないものに分かれます)にとどまらず、必要に応じて全層植皮術(自己皮膚移植術)や軟骨移植術(骨移植術のうち自家骨移植術に準ずるもの)なども適宜併用して、出来るだけ自然で左右対称な耳に近づけるように仕上げます。
※ 術中写真等血液の写り込んでいる写真も掲載しています。ご覧になる場合はご注意ください。
耳介軟骨は弾性軟骨といって硝子軟骨(肋軟骨や関節軟骨、鼻の軟骨など)や線維軟骨(顎関節や半月板など)とは違う特殊な性質があり、この性質を持つ軟骨は他には耳の奥の耳管と喉の奥にある喉頭蓋軟骨だけです。 柔らかくて弾力があり、元の形に戻ろうとする性質が非常に強いため力で曲げても後戻りしやすく、戻らないように曲げるには、この性質に対する知識と「コツ」が必要です。
上記のページでは、耳の軟骨を綺麗に曲げるためにどのような工夫をしているか、基礎から分かりやすく解説しています。患者さんのみならず、同じ手術を行っている医師の皆さんにも目を通していただき、できれば忌憚ないご意見を頂戴したいと思っています。
ピアストラブル(かぶれや痛みなど)、ピアスの穴ふさぎ、ピアスによる耳切れの修正手術なども扱います。(手術は自費になります。)
ピアスホールにできてしまったできもの(多くはケロイド 上図右)や耳の前後にできる腫れたできものの切除などもしています。
ピアスを開ける際の位置ぎめのご相談などもしています。耳は左右対称でないことも多く、他人から見たときに綺麗に見える位置は自分で鏡を見た時とは違っていることもあります。
PC版サイトになりますが、チャームアップピアッシングのページを合わせてご覧ください。
先天的な穴(先天性耳瘻管)をふさいだり副耳の切除は大人であれば局所麻酔で対応できます。
耳介血腫や偽嚢腫は、比較的早期に手術するとほぼ完全に元どおりになります(上図中央)。高度に変形した柔道耳はケロイド体質やアレルギー・アトピーなど体質的な原因がある場合も多く、一度できれいに治すのが難しい手術です。症状によっては健康保険で行える場合もあり、保険適応可能であれば費用はそれほど高額になりません(6〜12万円程度/片側)。その他の特殊な変形(スタール耳など 上図左)の形成手術も適応があれば健康保険の範囲で行なっています。
最近は保険者の審査が厳格になり、手術の一部が保険適用を認められないケースが出てきました。特に軟骨移植や皮弁術を併用した場合、その必要性をコメントしても支払いを拒否される場合があります。保険医療は破綻しかけています。今後は自費手術に変更を余儀なくされるようになると思われます。
立ち耳や耳たぶの形成など 一部の美容外科でも行なっている難易度の比較的低い(言い換えると簡単な)自費手術だけでなく、大学病院などでもあまり対応してくれない複雑な折れ耳、埋没耳、スタール耳などの先天的な形の異常やその複合、柔道耳(花キャベツ状耳)などの外傷による高度な変形、他院術後の変形の修正など、普通の美容外科では対応できない手術も行います。
大江橋クリニックは入院設備がないため、肋軟骨移植を必要とする定型的な小耳症手術や中学生以下の子供の手術は行えません。入院を必要とする手術は大学病院等に行っていただくことになります。最近相次いで名人と言える先生が亡くなったり引退されたりして、ご紹介先に苦慮しています。大江橋クリニックでは局所麻酔で行える外来手術のみを行なっています。
耳介血腫で血を抜く処置を繰り返していて感染を起こし、軟骨炎で軟骨が溶けてしまい垂れた耳介を、残った軟骨の位置をずらして移植することにより立ち上げた手術の一例。術後日が浅いため赤みがあります。耳の手術の赤みは3ヶ月くらいのこります。
※ 術中写真等血液の写り込んでいる写真も掲載しています。ご覧になる場合はご注意ください。
美容的な手術は自費です。耳たぶを大きく・小さくするだけでなく、ピアスで裂けた耳たぶの修復や拡張したピアス穴を塞ぐ手術も自費になります。
生まれつき小さな耳たぶを、少しだけ大きくした一例。頬への移行部が下に引きずられたようになっているのも丸く修正している。他院では耳たぶへの脂肪移植やヒアルロン酸の注入、シリコンプロテーゼの移植等を勧められたが、耳たぶに異物を入れると感染の可能性からピアスができなくなると言われたため、大江橋クリニックでの手術を希望して受診した。皮弁術を行なって耳の後ろの皮膚を前にずらす方法で大きくした。皮膚をずらすことで塞がったピアス穴は後で同じ場所に開け直した。
大学病院の手術が最善とは限りません。耳の症例が少ないため研修医への指導を兼ねた実験的な治療となる施設もあります。また大手美容外科などでも、耳の経験の少ない医師により軟骨の粗雑な切開を受けてかえって不自然な変形を起こしてしまうことがあります。一旦不自然に折り曲げられた軟骨は、出来るだけ元の形に戻して平に縫合してから曲げ直しますが、左右非対称に一部を切り取られていたりすると、なかなか自然なカーブを再現することが困難になります。
様々な変形があり、かつては耳介形成で著名であった関西の某有名大学病院(もっとはっきり言ってしまえば当クリニック院長の出身校である京都大学形成外科)で、子供の時に耳垂裂の手術だけを受けたが、あまりきれいな結果にならず残りの異常も治らなかった。大江橋クリニックでは軟骨を曲げ直したり位置をずらしたりして、複数回の手術で少しずつ修正した。中央は耳たぶ、耳甲介、耳輪脚、耳輪のカーブなどを数回にわたり微調整した後の、細かい調整を行う最終手術の際の術前デザイン。耳介上部の軟骨が薄く、特に耳輪の立ち上がり部分(点線)がマスクをかけると折れ曲がって痛いため、付け根の軟骨を一旦切り離し、上にずらして移植し、2枚重ねにして補強しました。見た目ではなく機能的な改善(マスクがかけられるようにする)を目指した手術となり、健康保険対応としました。
耳のケロイドなど色々な耳介腫瘍を切除したり、他院の美容手術後の変形を修正したりもしています。軟骨移植が必要であったり皮膚移植が必要な耳介形成手術など高難度な手術も行います。
立ち耳の手術は自費になります。これは大江橋クリニックの方針というわけではなく、厚生労働省の見解(単なるたち耳の矯正手術は美容手術であり健康保険の適応外)に従ったものです。立ち耳修正では、耳介上部の軟骨に裏から3本ほど切開を入れ折り曲げて後ろに寝かせる方法が主流ですが、その方法では自然な形にはなりません。耳介の形は人により、また左右により違うため、左右それぞれの耳を別々の方向から見たときより自然に見えるよう努力しています。標準的な手術法では対耳輪の微妙なカーブを繊細に表現できないため、少々手間はかかるものの後戻りの少ない方法を工夫しています。
様々なクリニックで行われている立ち耳の手術の術後結果の例。一般的な医療水準を理解してもらう目的なので、他院を貶める意図は無く引用元は明示しません。いずれも「軟骨を折って裏から縫合する」術式と想像されますが、そのため対耳輪が細く折れて鋭く直線的になってしまっています。
一方、下に示したのは右から、耳を失った人が装着する偽耳(エピテーゼ)の例、ピアス展示用に作られた耳のマネキンの例、ネット上に挙げられている正常と思われる耳の写真の一例、大江橋クリニックで行った立ち耳手術の術後写真(この下に挙げた症例)です。いずれも対耳輪がある程度太く柔らかい曲面でできていることがわかります。
耳の形に正解はなく、人によって形は様々ですが、耳介軟骨は一般にごく一部(対耳輪第1脚が耳輪の中に隠れていく部分など)を除いて鋭く折れたところがなくなだらかな曲面で構成されています。この柔らかなカーブを保つために大江橋クリニックでは様々な工夫をしています。
片側の立ち耳。対耳輪の縦方向の曲がりが少ないだけでなく、耳の中央あたりが不自然に凹み、左側の正常な耳とはずいぶん形が異なっています。一般的に美容外科や形成外科で行われているような、耳の上方を後ろに折り曲げるだけの手術では改善できません。軟骨を自然に曲げるため一旦前面の皮膚を取り除いて軟骨に細かく浅い筋を入れて行きます。手術時間は片耳で1時間半〜2時間くらいかかります。こうした手術は自費になります。
健康保険の適用できる症状があるものは保険で、美容的なものは自費で手術しています。耳たぶの手術はあまり痛みは生じませんが、耳介軟骨を扱うものでは術後数日の痛みは避けられず、痛み止めの内服が必要です。腫れや赤みも場合により術後2〜3ヶ月続くこともあります。しかし最終的に左右差の少ない自然な耳になるように切開線や細部の丸みなどにも気を配っています。