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イメージ写真、症例写真の掲載方針
〜 about Case- & Image-photos 〜

Stuttgartの風景

以下は主に医療広告等の規制に関する意見表明です。長文です。
ご自身の病気やトラブルを解決するための情報源として当サイトを利用する患者さんや一般の方にとってはあまり意味がありません。読まなくて大丈夫です。

医療広告ガイドラインについて

2018年厚生労働省は医療広告ガイドラインを改訂し、医療機関のウェブサイトをそれまでの「患者さんへの無償の医療情報提供の手段」ではなく集客(集患)のための「医療広告」と見做すことにしました。その際医療広告の内容を診療時間や所在地など予め法律で定めたいくつかの項目に限定し(ポジティブ・リスト方式)その他は一切認めない(治療内容に関する広告はほぼ一律に禁止する)としていた従来の方針を変更し「患者さんにとって有益な情報提供であればある程度は認める」方向にシフトしました。

【重要な前提】 厚労省は「医療機関ごとに医療水準の優劣がある」という、一般の人にとって常識的な事実を一切認めない立場(建前と言っても良い)をとっています。全国のどの医療機関も同じ水準の医療を提供すべきであり、突出して良質な医療を提供する医療機関(いわゆる名医)は存在しない(あるいは、するはずがない、してはいけない)という立場をとっているため、例え事実であっても他の医療機関と医療水準の優劣を比較するような記載は一切禁止することにしていて、今回の改訂でもその方針は堅持されています。

上記の考え方にしたがって、いわゆるビフォーアフター写真(治療前・治療後の比較写真)をサイトに掲載することは、患者さんがその医療機関の医療水準が他よりも優良であるかの如く「誤解する」恐れがある(優良誤認)という理由で禁止されています。
しかし、それまで長年「医療機関のウェブサイトは情報提供の手段に過ぎず医療広告ではない」と規定してきたため、全国の医療機関のサイトには自院の特色や治療内容の解説、医師の著書の紹介や患者さんの感謝の声、たくさんの症例写真などが溢れていました。これを「今後は医療広告と見做して全て禁止!」としてしまうと、これまで多くの患者さんの「医療機関選択の基準」ともなっていた重要な情報がインターネットの世界から一律に削除され、患者さん・国民の医療内容について知る権利が厚生労働省によって大きく損なわれることになります。これはさすがにまずいと思ったのでしょう、医療広告ガイドラインでは一定の条件をつけ「条件をクリアすれば」限定解除する、すなわち一律禁止ではなく条件付き掲載を認めることにしました。

大江橋クリニックのサイト改訂について

大江橋クリニックでは、2006年の開院当時からウェブサイトを業者に任せず自作しており、特に2007年からは当時の厚生労働省の見解(ウェブサイトに表示される内容は、患者さんが能動的に検索して初めて表示されるものであり、他のコンテンツを見ているときに画面の一部に無差別に表示される広告とは異なるものである、という常識的なもの)に基づいて大江橋クリニックで行っている診療に関する医療情報を積極的に開示していく方針をとってきました。厚労省の突然の方針転換により法改正がなされた2018年当時、すでに2007年から11年間書き溜めてきた大江橋クリニックのサイト内には、100ページを超える豊富な記述の中に症例写真以外にもクリニックで使用している「医療機器や薬剤の商品名」や「クリニック独自の治療法」など、法改正によって新ガイドラインに抵触することになった記事がたくさん含まれていました。
それまでは患者さんが自ら検索して得た情報は、クリニックから患者さんに送る院内誌や院内に掲示してあるポスター、患者さんが手に取れるようにしてある院内パンフレットなどと同じ扱いで医療広告とは見做さないことになっていたので、症例写真だけでなく様々な記事をクリニックのサイト内や関連ブログにたくさん掲載してきたのです。大量なので一度に書き換えることは不可能でしたが、全て削除するのは患者さんの選択の自由を奪い、大江橋クリニックで治療を受けたいという患者さんにとって不利益をもたらすと考えました。
そこで、2018年6月(新ガイドラインの発効した月)頃から、今までのサイトを全体としてPC版アーカイブ(書庫:いわゆる過去ログ倉庫)にまとめて特段改訂せずそのまま別フォルダ(アーカイブフォルダ /archive/)に格納し、モバイル環境にも対応した新しいページを作って、そこに徐々に患者さんにとって有用と思われる内容を移行していくことにしました。

その際、症例写真は患者さんへの情報提供として特別な意義があると考えて、一律削除ではなくむしろ拡充することとしました。ただしアイキャッチによる誘引を目的とした「広告」と誤解されにくいよう、検索などで当クリニックのサイトを訪れた訪問者が最初に見る画面(ファーストビュー)には誘引広告との誤解を招くような術前術後の症例写真はあまり表示されておらず、文章を読み当クリニックの診療姿勢に興味を持ってサイト内を探索した時に、クリックして初めて表示されるような仕様にしました。
単に近くにある医療機関を検索しているだけで、大江橋クリニックの特色を理解して受診するのではなく、手近な「処方箋屋さん」を求めている患者さんにとっては詳しい説明など不要でしょうし、地図や診療時間さえわかればそのまま引き返すでしょう。大江橋クリニックの診療姿勢に興味を持ち、各項目をじっくりと内容を読んでみようと考えた方にだけ表示されるような仕組みになっていれば、症例写真とその解説はクリニックを実際に受診して説明を書いた本人である医師から直接説明を聞くのと事実上同じことになるはずと考えたのです。
実際、キーワードなどのGoogle検索から当サイトへやってくる訪問者の85%程度はページ内を一度もクリックすることなく1秒以内に他のサイトに行ってしまいます。30秒くらいでサイトを離れる人は、自分の希望する診療内容ではなかったためか、診療時間やアクセスマップなどを見るだけで十分だったのでしょう。残り数%の特定の記事に関して内容をじっくり読んでみようと思った人だけの目に止まるのであれば、大江橋クリニックを実際に受診して院内パンフレットを持ち帰って読むのと差はないはずです。そう考えたのですが、厚生労働省の考えではどうやらどんな形であれサイトのページを見た人は大江橋クリニックの医療広告に誘引されたことになるようなのです。

監視機関からの注意喚起について

2022年2月頃、厚生労働省の委託先機関と称する「デロイト トーマツ コンサルティング合同会社」というところから大江橋クリニック宛の手紙が届きました。当サイトに「ガイドラインに抵触する内容を発見したので適切な対応をとるように」との「注意喚起」をする目的だとのことでした。「医療機関ネットパトロール」なる密告サイトがあるそうで、おそらくそこに「同業者」の誰かが通報したものと思われました。こうしたサイトがあることは知っていましたが、サイトを見ても運営会社の情報開示もなく、公的機関を装ったいわゆるフィッシングサイトの一つに見えました。悪質な詐欺に引っかからないようにしようと思いしばらく放置していました。ところがそれは厚生労働省が外部の下請け会社に丸投げした「監視機関」だったようです。
注意喚起とあるものの、指摘した内容をおよそ1ヶ月で改善しなければ違反広告として都道府県に報告する、との脅し付きです。おそらくはサイトを調査しているのは医療者でない監視専門業者であるらしく、重箱の隅をつつくような数多くの指摘のなかには確かに納得できるものもありましたが、意味不明なものや解釈の違いにより不当に思えるものもたくさんありました。何よりその多くは既にアーカイブに保存した「古いPCサイト」に対するものでした。
大江橋クリニックのサイトは院長個人が診療の合間に少しずつ書き換えているため、モバイルサイトへの移行には時間がかかっていました。監視業者が想定しているような「大手広告会社が制作する患者誘引用の広告サイト」とは違い、一つのリンク切れを治すのも診療の合間、合間に少しずつhtmlファイルやスタイルシート、画像を入れ替えるので1日がかりです。全体を書き換える大掛かりな更新には数年を必要とするでしょう。その間の当クリニック訪問者への利便性を考え旧PCサイトを残して「検索すれば見える」ようにしてあるのですが、特に宣伝もしておらず基本的にはいわゆる「過去ログ」に属する「アーカイブフォルダ」に移動したページは特に改訂する予定がありませんでした。徐々に内容を更新している現在のサイトのページに文章などを移行した後はいずれは削除するべきページなので、コロナ禍で非常に多忙な折、古い記述を修正する余力がありません。
金額の表示の仕方(* 〇〇円〜では上限金額が表示されていない、など)や説明不足な点(* 手術には「痛みが伴う」「出血する可能性がある」などのリスクが記載されていない、治療が終了するまでの通院期間が明示されていない、など)等々の一部内容は指摘を踏まえて急いで書き直しましたが、このためレイアウトが崩れてしまい読みにくくなったページもたくさん発生しました。結局時間の関係であとは放置しています。そもそもほとんどが「医療広告ではなかった」2012年頃に書いた古い記事であり、患者を誘引する意図もなければ、その効果もないようなページです。全く宣伝していないため訪問者もごく稀です。(中には最近1ヶ月間にトーマツ関係者と思しきアクセス1件しかないページもありました。)平均して一月に数件しかアクセスがないような古いウェブページを長時間かけて現在の基準で編集し直すほど暇ではありません。10年以上前の記述ですから時代に合わない古いものも多々ありますが、それは患者さんが見ればわかることです。もちろん見ようと思えば見えるところに置いてあるので、丹念に検索すれば見つかるでしょう。それすら違反だとして削除命令があるのであれば削除するか検索にかからない場所に移すなど適切な処置をします。しかしいわば図書館の奥にある古い本のようなページに対してそんな手間をかける必要があるのでしょうか。
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2018年に作成を始めたモバイルサイトには今後も必要に応じて様々なイメージ写真や症例写真を掲載していく予定でしたが、今回の指摘を受け現在のところ大きな変更は控えています。実はこれをきっかけにしたわけでもありませんが、大幅なサイトデザインの改定も予定しており、すでに一部のページは新しいレイアウトで作成を開始しています。大阪万博の頃には完成しているといいのですが。今度は様々な大きさの画面に対応できるよう(ただし現在流行しているリキッドデザインのような、どの大きさの画面で見ても中途半端で醜いやり方ではなく、画面の大きさごとに表示を最適化した)見やすいページを予定しており、その際には特に症例写真に関してはこれまでにも増して単純な術前術後比較写真ではなく、手術の際どういう点に注意を払っているかなど患者さんの理解が深まるように説明をつけて掲載していくつもりでいます。
随所に挿入してあるイメージ写真については、「医療に関するものでない場合は特段制限しない」そうですが、医療に関するものでないかどうか判断が難しいケースは多々あります。このサイトでも耳や目など体のパーツのイメージ写真について、ネットにある写真集から拾ったものと大江橋クリニックの患者さんの写真とを厳密に区別してはいません。患者さんのものは厳密には症例写真と言えるかもしれませんが、イメージ写真のように扱っているものもあります。
手術内容を説明する症例写真に関しては現在もできるだけ説明をつけていますが、ガイドラインにいう宣伝・集客を目的とした「ビフォーアフター写真」とは位置付けや考え方が異なります。当サイトにいわゆるビフォーアフター写真はありません。基本的にそういう考え方をしていないからです。

いわゆる「ビフォーアフター写真」とはレストランのメニューにある料理写真やショーウィンドウに飾られた商品見本のように、注文の際に参考にする見本だと思うのです。それなら確かに「治療法や値段、治療期間やリスクが書いていないものは不可」としてもいいかもしれない。メニューに「時価」とだけ書いてあるようなもので、患者さんも注文すべきかどうか迷うでしょう。しかし治療方法の解説や治っていく経過、あるいは特殊例の治療に対する考え方などを説明する際に用いる参考写真に関しては、症例写真とはいえても「ビフォーアフター写真」という呼称はふさわしくないと思いますし、写真ごとに一律にそうした記述を義務付けるのもサイトの編集方針を無視したものでふさわしくない気がします。

ガイドラインについて再び

確かに色々な医療機関のサイトを見ていると、これはいかがなものかと思える表現に出会うことがあります。値引きやキャンペーンに類するものもあれば、ガイドラインに禁止例とされている表現と全く同じ大見出しを掲げているクリニックもたくさんあります。たくさんのクリニックのサイトに全く同じ写真がさまざまに加工されて掲載されています。おそらくホームペイジ作成請負業者が素材辞典の「女性編」あたりから探してきた「パーツモデル」の写真です。(素材辞典の写真は特徴があるので、見れば大体わかります。)
モデルの写真は実際の術後写真より綺麗ですし目も引きますが、そうした加工写真は特に問題がないようです。アイキャッチとしてはこちらの方がよほど有害でしょう。しかしそうした俗悪なサイトは大手の広告業者が作成しているらしく編集方法が一様なため、賢明な患者さんなら一眼見れば怪しさが大体わかりますし、わからないで引っかかるとすれば引っかかる側の勉強不足か常識不足でしょう。サイトをパトロールしているという担当者の方にも、そうしたサイトをきちんと見分ける目を持っていただきたいと思います。
悪質なものは多分取り締まった方がいいとは思います。ですが、そうした取り締まりはどちらかといえば厚生労働省がお座なりに丸投げした業者などではなく、消費者庁や警察が担当すべきだと思います。真摯に情報提供しようと努力している医療機関に対する厚生労働省による行き過ぎた「規則」「禁止」が日本の医療を萎縮させ発展を阻害していると思うことも多々あります。本来医療はもっと自由に発展し、日本経済の足を引っ張る重石ではなく経済の牽引役になるべきものです。消費者保護・患者保護と言いながら、消費者の自由な選択を助ける多様な情報を禁止するのはなぜでしょうか。一般の人は厚労省が考えているような馬鹿ばかりなのでしょうか。厚生労働省は良質な医療機関の味方となって、医療機関が積極的に有益な情報を発信するよう促すべきなのではないでしょうか。医療広告に限らず、コロナワクチンやジェネリック医薬品など、医療には本当は患者さんに理解してもらうべき情報を意図的に隠し、むしろ選択を誤らせる危険のある、わかっちゃいるけど言ってはいけない事が多すぎる気がします。今回の「注意喚起」には色々と考えさせられました。

大江橋クリニックでは、保険制度の複雑でわかりにくい仕組みや医療政策の矛盾点など、本来厚生労働省が患者さん・国民に対してわかりやすく説明すべき事柄に対して、各所で詳細な説明をおこなっています。厚生労働省はこうした情報発信にこそ努力すべきです。何故いまだに期限切れの保険証を使う人や保険診療になじまない無理な要求をする人が後を絶たないのでしょうか。文部科学省と連携して義務教育で医療制度の仕組みや保険医療の制限などについて教えようという気は無いのでしょうか。自分達さえわかっていれば良いという態度が医療不信を産んでいることをもっと反省すべきです。

もう一度書きますが、医療機関には優良なところとそうでないところが厳然としてあり、誤った情報を発信「するから」ではなく正しい情報発信を「禁止する」ことによって水準の低い医療機関が患者さんの無知を利用して淘汰されずに生き残り、患者さんの貴重な治療機会を奪っているのだと思います。多様な情報発信を政府や下請けの業者が無闇に禁止するのは民主主義とはいえません。真剣に医療に取り組んでいる医療機関ほどさまざまな規制に縛られて疲弊しています。民主主義国家の公務員である厚生労働省が権威主義的な姿勢を変えることを切に望みます。