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あざのレーザー治療
〜 Laser Therapy for Nevi 〜

Laser

大江橋クリニックで行っている
あざのレーザー治療について説明するページです


大江橋クリニック あざのレーザー治療

Laser

大江橋クリニックではレーザー治療はすべて自費診療としています。
レーザー治療費のほかに診察料・レーザー予約料等が必要となります。

一部の母斑(ぼはん)に対して健康保険を適用したレーザー治療が認められていますが、レーザー機器や治療間隔、治療回数などに細かい制約があり最適な治療条件を選ぶことができません。大江橋クリニックでは、あざの治療は自費で行うことにしています。

あざ = 皮膚の一部が周囲と異なる色や状態になっている部分

一般にあざ(母斑)とは生まれつき見られる皮膚の一部の異常な色調を指す言葉です。
打撲などに伴って一時的にみられる皮下出血などを「青あざ」という場合がありますが、医学的な用語としてのあざではありません。
このページでは主要なあざのレーザー治療について解説します。

大江橋クリニックでは、最適なレーザー治療をリーズナブルな料金で行なう事を心がけております。1回1〜数万円の治療費で1〜数ヶ月に一度患部にレーザー照射します。
症状によって効果に差はありますが、通常は1回の治療ごとに気になっていた色は徐々に薄くなります。治療間隔や回数には健康保険のような制限がありません。具体的な治療法については以下の項目をお読みください。
健康保険での治療をご希望の場合には信頼のおける他の医療機関をご紹介しています

赤あざ(血管腫等)の治療

赤あざには様々な種類がありますが(日本皮膚科学会の皮膚科Q&A Q12を参照してください)、主なものについてのみ解説します。
※ 皮膚科学会のページの記述は古く不正確です。分類はさておき、治療法の記述は何十年も前のものです。権威あるページなので引用していますが、鵜呑みにせずレーザーを専門とする施設に相談してください。

単純性血管腫 生まれつきある平らな赤あざ 毛細血管奇形

腫瘍(できもの)ではなく、先天奇形あるいは異常の範疇ですが、慣用的に血管腫と呼ばれています。
毛細血管や、それよりもう少し太い血管が網の目上につながり合い中を血液が流れていて赤く見えます。皮膚の深いところにあると青く見えたり紫色だったりすることもあります。通常は増殖しませんが、成長に伴って大きさは拡大します。
大人になると部分的に盛り上がってくることがあり、厚みも出てレーザー光が届きにくくなるので、お子さんのうちに治療した方が成績はよいようです。数回の治療でかなり薄くなります。しかしあざの性質上、完全に消えるとは限りません。
血管ですからゼロにするわけにはいきませんし、正常部位とは血管の性質や太さ、拡張性なども異なるので、気温や運動、食事、入浴などによっても色調が変化します。日常生活上あまり気にならなくなれば治療は終了して良いあざです。

大江橋クリニックではシナジー・マルチプレックスを用いて治療します。
 ※ 同じ会社製のシナジーJ とは違う機種です

シナジー・マルチプレックスの特徴は、既存の健康保険適応機種(Vスター、VビームやシナジーJ )等と同等の波長の色素レーザーと同時に、波長1064ナノメートルのYAGレーザーを同じ患部に照射できる事です。
マルチプレックスモードでは、同じハンドピースから色素レーザーに続いてYAGレーザーが一定の時間差で連続して照射されます。
この「色素レーザーパルス>ディレイタイム>YAGレーザーパルス」をそれぞれ調整する事により、単に2種類のレーザーを別々に照射した場合よりも治療効果を上げることが期待できます。

もちろんマルチプレックスモードの単回照射だけでなく、症状にあわせパルス径や照射条件を変えて同じ場所に数回の照射を繰り返すなど、自費ならではの自由な治療法を選択できます。

現在、国内の色素レーザー市場はほぼキャンデラ社のVビームが独占状態です。他の機種も基本的にはVビームと波長・パルス幅が同一なので、治療法の選択の幅がありません。皮膚科学会のサイトにはVビームが効かなければ治療を中止すべきとまで書かれています。しかし、それは健康保険に限っての話であり、保険適応のないレーザーで治療効果のあるものはいろいろあります。
その一つであるシナジーマルチプレックスで治療を行えるのは国内では現在数施設に限られます。(中国や韓国にはたくさんあるのですが。)
サイノシュアー社が国内販売を終了しているので、メンテナンスできる技術者も大変少なくなっており、今後も治療を続けられるかどうか心許ない状況ですが、大変優れた機械です。頑張って保守していきたいと思っています。

レーザー治療費は診察の上決定します

実際の治療に当たっては、細かい面積計算は行ないません。
切手大1万円、名刺大3万円、頬から顎3.5万円、顔面半分5万円(消費税別)などのように大雑把に概算で治療費を決め、患者さんの同意を得て治療を行ないます。
保険治療で決められているような10平方センチ(およそ五百円硬貨2枚分程度)単位で治療費が5,000円ずつ小刻みに上がるようなシステムは採用していません。
小部分のテスト照射は基本料 税込11,000円程度です。診察料、レーザー予約料等が別途かかります。

参考: 健康保険では治療費は面積に応じて基本料27,120円〜最大(180平方センチ:およそ大きめの絵ハガキ大)112,120円(3歳未満は+22,000円)
自己負担(窓口支払い)は通常その30%なので診察料処置料込みでおよそ10,000円〜40,000円程度になります。

苺状血管腫(盛り上がった赤あざ) 乳児血管腫

生まれて数週間目ぐらいから急速に盛り上がってくる赤あざです。
いろいろな治療法がありますが、小さなものでは放置しておいても小学校に上がる頃までに小さく萎んで消えてしまうこともあるため、未だに放置をすすめる小児科医・産科医もいます。(皮膚科学会のページにもそう書かれていますが、上述したように、この記述は古い!です。)

しかし大きく盛り上がったものは、いずれ縮小することが多いとは言っても、完全には消えずに残ることがあります。
顔面など目立つところにあれば、消えないかもしれないのに数年間放置する決断をするのは難しいものです。

消えない場合は大人になってからレーザー治療などを行うことになりますが、皮膚が瘢痕化しているため効果が薄く、結局切除手術の対象になることもあります。

→レーザーと手術の総合治療・苺状血管腫の例を参照

数年前まではレーザー治療が主流でした。レーザー治療の開始時期は早ければ早いほどよく、見つけ次第、できれば盛り上がる前に治療するのが結果が良いようです。

近年では血管腫が生後に盛り上がってくる仕組みの解明が進み、血管内皮の過度な成長を抑える内服薬治療が試みられるようになりました。小児科や小児形成外科主導で重症なものから内服薬治療が行われるようになり、2016年には小児用シロップが発売されたため、今後は内服治療が主体となっていくのではないかと思われます。
ただし内服薬治療では血圧低下など思わぬ全身性の副作用が出ることもあり、入院治療や服用後しばらくの経過観察が必要です。
小さな血管腫であればレーザー治療やドライアイス圧抵治療などの局所療法の方が、結果的には素早く治療を進めることができる場合があります。

ドライアイス治療という選択肢

現在は治療法の主体が内服治療とレーザーに変わったため行われることがほとんどなくなった「ドライアイス治療」ですが、爪甲大の病変など適切に症例を選べば1〜2回の治療で完全に「あざを消す」ことができます。
治療のコツは、あざの大きさに合わせて先を平らに削ったドライアイスの棒を、病変全体に均等に圧がかかるように4秒間強く押し付けます。あとは火傷や凍傷の治療と同じように軟膏を塗ってガーゼで1週間覆います。痛みがあるのが欠点ですが新生児期に行えばひと泣きして終わりで瘢痕も記憶も残りません。
決して液体窒素など他の冷凍材料を使わないこと、時間を正確に測ること、処置後の創部の安静を保つことの3つが守れればレーザーを持たない皮膚科でも、小児科でも治療できます。血管内皮細胞は凍結するが真皮のコラーゲン線維(低温に強い)の構築が壊れないため瘢痕にならないのです。熱を加えるレーザーよりも優れているかもしれません、

レーザー治療費は診察の上決定します

実際の治療に当たっては、細かい面積計算は行なわず、切手大1万円、名刺大3万円(消費税別)などのように大雑把に概算で行ないます。小部分のテスト照射は税込11,000円程度です。自費診療のため診察料、予約料等が別途かかります。
当クリニックでは治療対象を大人に限っていますので、実際にはレーザー治療で治ってしまうことは稀です。大人の場合はいちご状血管腫が残っているのではなく、瘢痕になっているか、海綿状血管腫という消えない血管腫になっていることが多く、切除手術を併用することになります。手術料は顔面の傷痕の出漁に準じます。

毛細血管拡張(赤ら顔など)

顔面や体などにある毛細血管は通常目に見えませんが、拡張して皮膚全体が赤みを帯びたり、あるいは細い糸くずが絡まり合ったように目に見える状態になることがあります。
紫斑(皮下出血)の起こるレベルで強く照射すると、不要な血管が破壊されて消失し、数回の治療でかなり改善します。ただし、症状により再発することもあり、また紫斑が生じると日常生活に支障があるため、美容的な目的で照射する場合は通常弱目のエネルギーで照射し長期の加療が必要となります。

治療費は上記シナジーの治療に準じます。

赤面症にはレーザー治療はお勧めしません

毛細血管拡張に良く似た症状に、しゅさ(いわゆる赤ら顔)や赤面症(時間や環境によって赤みが短時間に出たり消えたりします)などがあり、これらはレーザー治療以外の治療法を選択しても良いかもしれません。

しゅさ(いわゆる赤ら顔)は内服治療でもかなりの程度改善します。レーザーは良い治療法ですが、レーザー単独ではなく他の治療法も併用する方が効果が上がります。
これとは異なり赤面症は自律神経の働きで血管の拡張収縮が短時間に起こり症状が動的であり、血管が増えているわけではありません。心理的な原因がベースにある赤面症にはレーザー治療はあまり効果がなく、むしろ心療内科などで心理治療を行なうべきです。

補足: 下肢静脈瘤

細い静脈が皮膚表面に赤く、あるいは薄青く浮いて見える程度のもの(直径1ミリ以下の表在性血管)はシナジーのマルチプレックスモードが最適です。ただし、静脈を確実に閉塞させるには強い出力が必要となり、やや痛みの強い治療となります。

青いこぶが下肢の皮下にたくさんできる重症のものは、従来入院の上ストリッピング手術(皮下の血管を引き抜く手術)が必要とされてきました。
症状が一部分に限られる軽症のものであれば、局所麻酔手術でその部分の皮膚を小切開し、静脈のこぶになっている部分や不全交通枝(弁が壊れて深部静脈と繋がった血管が逆流している部分)などを部分切除・結紮を行なう事で改善できます。このような手術を形成外科で積極的に行っている施設もあります。

しかし現在では血管内レーザーなど強いエネルギーを照射できるファイバーを血管内に入れて、血管内部から焼灼する技術が普及してきたため、注射で行なう硬化療法や接着剤注入と組み合わせて行う治療が効果的です。この方法は血管に精通した血管外科の医師が行なうべきですが、最近では形成外科で行う施設もかなり増えてきました。大江橋クリニックでは、院長が開業前からお世話になっている熟練した血管外科専門医をご紹介しています。

静脈瘤のレーザー治療費

部位や面積、血管の深さなどで細かく設定を変える必要があり、実際に症状を拝見してからの相談となります。
通常1〜数万円程度の治療になります。

大江橋クリニックでは、主にQスイッチ付ルビーレーザーを用いて治療を行います。

自費治療でもリーズナブルな金額で治療を行なう事ができます。ご相談ください。

太田母斑とその類症(顔の青あざ)

太田母斑は主に額から目の周囲、頬にかけての青あざで、通常は生まれつき色があり、思春期になって濃くなってくることが多いとされています。原則的に片側ですが、まれに両側に出ることもあります。
Qスイッチ付ルビーレーザー治療のよい適応です。間隔をあけた数回の治療でかなり改善します。回数を重ねることにより、ほとんど目立たないくらいまで消すことができますが、場所によって消えにくさが違い、特に目の周囲などは繰り返し照射が必要となります。一部を切除した方が早いこともあります。

いわゆるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)についてはこの下の項目で解説しています

異所性蒙古斑(体の青あざ)

東洋人に多いおしりの青あざと同じものが、体の他の部位にできたもので、おしりと違い大人になっても消えないことが多いので、通常は子供のうちに Qスイッチ付ルビーレーザーで治療します。レーザー治療後に色素沈着を来しやすく、それが治ってから次回照射を行う必要があるため治療間隔は比較的長くなりますが、数回の治療でかなり薄くなります。

いわゆるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と言う症状

肝斑と混同されて美白剤やエステなどで治療される事が多い疾患ですが、肝斑とは症状が異なり、見慣れた医師であれば診断がつくことが多いです。
早い人で思春期から、多くは30代頃に初発し、主に頬に点々と灰褐色の色素斑が増えてきます。色素斑一つ一つの粒が大きく、融合せずにバラバラにできてくるのが特徴です。太田母斑は通常片側ですが、ADMと呼ばれる色素斑はほとんどの場合両側に同時に出るのも特徴的です。 ルビーレーザーのよい適応で数回の治療でかなり改善します。回数を重ねることにより、ほぼきれいに消すことができます。
ADMという名称は診断する医師によって考え方が異なり、小鼻に生じたり鼻根部、額、下眼瞼に斑状に現れる後天性の色素斑も含むより広い疾患名として用いられるようにもなり、必ずしも先天性の素因があるとは限らない炎症性のものが含まれているようです。このため健康保険の適応疾患には挙げられていません。
大江橋クリニックでは、自己診断でADMだと思う、という場合はもちろん他院などでADMであると言われた、という場合でもまず細かく診察して症状を確認し、その上で病名に応じた治療方針をお話ししています。(ADMという病名には保険適応がありません。)

青色母斑はレーザーでは消すことができません

濃い青色をした比較的境界の明瞭なあざで、多くは直径1センチ以下で比較的小さいために青いホクロに見えることが多く、見慣れた医師であればすぐ診断がつきます。
正体は真皮の深いところにできた母斑細胞性の母斑、いわゆるホクロです。 切り取ってみるとわかりますが、あざの細胞自体は真っ黒で、それが皮膚を透かして青く見えるものです。
母斑細胞の数が非常に多く密集しているため、レーザーで破壊し尽くすことはできず、また瘢痕化も強く起こります。ごく稀ですが悪性化することもあると言われているため、何回もレーザー照射を繰り返すことは勧められません。
大江橋クリニックでは、青色母斑に関しては手術による切除をお勧めしています。場所にもよりますが切開の傷痕は比較的目立たずきれいに治ります。

盛り上がりのない平らな褐色のあざで、いくつかのタイプがあり、かなり色の薄いものからカフェオレ斑と呼ばれるミルクコーヒー色の濃いもの、色むらがあったり細かい点が密集しているようなものも含まれます。 扁平母斑は平らなあざという意味しかありませんが、現実にはさまざまな別の疾患を含む概念と思われ、治療に対する反応性も様々です。

通常はQスイッチ付ルビーレーザーで治療しますが、1回の治療で消えてしまうものは少なく、再発することが多いようです。
長い経過後に徐々に再発したり、再発ごとに色が薄くなることもありますが、中には照射後すぐに点状に毛穴の色が濃くなるなど非常に再発しやすいものもあります。治療前に再発の可能性を見分けることは難しいことが多く、現時点では治療が難しいあざの一つです。

すぐに再発してくる場合には小さいものであればレーザー治療よりも切除を選択することもあります。
薄くなるが完全に消えないような場合、内服薬や外用剤で治療することもあります。
医師によっては何がしかの傷を残さずには完治しないと言う意見もあります。

深い毛穴から再発するような場合は、ルビーレーザーより深達性に優れたYAGレーザーなどが効果を発揮する可能性もあり、重ね照射をすると結果が良いこともあります。波長の異なる数種類のレーザーを照射して再発を防いだ例もあります。

ここに言う色素はメラニン色素のことではありません。ケガのあとは炎症を起こし二次性にメラニン色素が増えて茶色になりますが、この色素沈着はレーザー照射を行うとかえって悪化し、濃くなって目立ちます。炎症が再燃するためなので、当然と言えば当然のことです。

外傷性色素沈着症の「色素」は外来性の異物を指し、転倒してできた擦り傷の中にアスファルトの粉や砂、壁や床に塗ってあった化学物質としての色素などが残り、青黒い刺青のようになったものです。Qスイッチ付ルビーレーザー治療のよい適応で、繰り返す事によりほぼ完全に取り除くことができます。深い場合にはヤグレーザーなどを用いることもあります。元々が傷痕なので、傷がなくなることはありませんが、レーザーによるコラーゲン修復を促す作用が働いて、傷痕がねめらかになり目立たなくなる効果も期待できます。

平らな大きな黒子の様な黒あざです。(と言うより、ほくろは色素性母斑の小さなものです。)レーザー治療も不可能ではありませんが、非常に多くの回数がかかることが多く、多少薄くはなっても完全には消えず不完全な結果に終わることが多いので、現在のところレーザー治療の良い適応にはなりません。
十分な説明を受けずに治療を繰り返した結果、傷痕とアザが混じり合って却って不自然な見た目になることもあります。切除やドライアイス治療、いくつかの種類のレーザーを組み合わせて治療します。手術がもっとも確実ですが、ある程度の傷が残ってしまいます。
切除すると皮膚移植が必要になるような巨大なものに関しては、従来ストリッピング(皮むき)と呼ばれる手術が主体でしたが、傷痕が汚く残ることがあり、皮膚を削ってから培養した自分の表皮細胞シートを移植することも試みられています。最近では一旦切除した皮膚に高圧をかけて黒い母斑細胞を殺し、元に戻してからその上に正常な表皮細胞を移植する方法などが開発されて効果を挙げています。(現在の京都大学形成外科・森本教授が中心になって開発した方法です。)

付録: 健康保険のレーザー治療に関する若干の考察

健康保険に規定のあるあざ(母斑)

健康保険の値段表である診療報酬点数表の皮膚レーザー照射療法に関する項目(医科 第2章 特掲診療料 第9部 処置 第1節 処置料(皮膚科処置)J054-2 皮膚レーザー照射療法(一連につき))には、「通知」として以下の記載があります。(抜粋して要約)

  • 色素レーザー照射療法は、単純性血管腫苺状血管腫又は毛細血管拡張症に対 して行った場合に算定する。
  • Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法及びルビーレーザー照射療法は、太田母斑異所性蒙古斑外傷性色素沈着症扁平母斑等に対して行った場合に算定できる。
  • Qスイッチ付アレキサンドライトレーザー照射療法は、太田母斑異所性蒙古斑外傷性色素沈着症等に対して行った場合に算定できる。
  • Qスイッチ付ヤグレーザー照射療法は、太田母斑異所性蒙古斑又は外傷性色素沈着症に対して行った場合に算定できる。

このままではわかりづらいのであざの種類の観点から整理してみます

赤あざの治療には色素レーザーを用いる。
病名は 単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症。
青あざの治療にはQスイッチ付ルビーレーザーQスイッチ付アレキサンドライトレーザーQスイッチ付ヤグレーザーなどのQスイッチ付レーザーと、Qスイッチのつかないルビーレーザーを用いる。
病名は 太田母斑、異所性蒙古斑と、あざではないが外傷性色素沈着症など。
茶あざの治療にはルビーレーザー(Qスイッチ付きのものとQスイッチのつかないもののどちらでも良い)を用いる。
病名は 扁平母斑など。

※ 細かいですが、色素レーザー照射療法とQスイッチ付ヤグレーザーに関しては、適応病名に「等」がついていません。他の病名では保険適応が認められないと言うことです。
ルビーレーザーとアレキサンドライトレーザーに関しては、これ以外の病名であっても保険での治療が認められる可能性があることを示しています。
具体的には、日本皮膚科学会が提供する皮膚科QandAの解説ページには、茶あざ(扁平母斑)の類症であるカフェオレ斑ベッカー母斑、青あざ系では伊藤母斑持続性蒙古斑などの病名が挙げられています。

※ Qスイッチ付ルビーレーザー及びルビーレーザーと言う表現は、ルビーレーザーに関してはQスイッチ付であっても付いていないノーマルモードのものであっても良いということを示しています。ヤグレーザーとアレキサンドライトレーザーにもQスイッチ付のものとそうでないもの(一般にロングパルスと呼ばれるもの)がありますが、こちらに関してはQスイッチ付のものしか認められません。
美容系など他の目的に用いられる機器の一部や脱毛レーザーとして用いられるレーザーは、Qスイッチ付でない(ロングパルスあるいは連続発振の)機器なので保険診療のあざの治療に用いることはできません。

健康保険の治療に使えるレーザーの機種や治療回数には制限があります

医療機器は薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律)の承認を受け、診療報酬点数表の通知等に従って使用した場合に限り、健康保険の治療に用いることができます。

同等の性能を有する機器であっても、承認を受けていない場合(例えば同じ機器であっても個人的に海外から輸入した場合など)や、承認条件と違う使い方をした場合(例えば承認を受けたアレキサンドライトレーザーを扁平母斑の治療に用いた場合など)は同等の治療効果があっても保険の治療として認められません。

治療間隔や回数に関しては、以下のような規定もあります。(カッコ内はわかりやすいように補っています)

  • 一連(の治療)とは…所期の目的を達するまでに行う一連の治療過程をいい概ね3月間にわたり行われるものをいう。
    対象病変部位の一部ずつに(時間をずらして)照射する場合や、全体に照射することを数回繰り返して一連の治療とする場合は、1回のみ所定点数を算定する。
  • Qスイッチ付レーザー照射療法は、頭頸部、左上肢、左下肢、右上肢、右下肢、胸腹部 又は背部(臀部を含む。)のそれぞれの部位ごとに所定点数を算定する。
    また各部位において、病変部位が重複しない複数の疾患に対して行った場合は、それぞれ(別々に)算定する。
  • Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法及びルビーレーザー照射療法は、太田母斑異所性蒙古斑外傷性色素沈着症に対して再度当該(レーザー照射)療法を行う場合には、同一部位に対して初回治療を含め5回を限度として算定する。
  • Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法及びルビーレーザー照射療法は、扁平母斑等に対して(再度当該レーザー照射療法を行う場合に)は、同一部位に対して初回治療を含め2回を限度として算定する。

これも表現がわかりづらいので書き換えてみると

一連の治療とは
初回治療後3ヶ月間は(上肢、下肢などに大雑把にわけた)同一部位に追加で何回レーザー照射しても「一連の治療」とみなされ、治療費を最初の一回しか請求できない(ので、通常の医療機関では3ヶ月間は次のレーザー治療はできないと説明する)。
部位とは
広範囲の、あるいは多数のあざを治療する際には、上肢、下肢などの大きく分けた「部位」ごとにそれぞれ治療費がかかる。
例えば同一の部位(左上肢など)に2箇所以上あった場合、面積は合算して1部位として計算する。
ただし同じ部位にあっても別々の病名のあざが離れた場所にあり重なり合っていなければ、それぞれ別個に計算する。
※ 色素レーザーにはこの規定がないので、全身のあざの面積を合算して計算するものと考えられる。
治療回数とは
上肢、下肢などの部位ごとに初回治療日を記録しレーザー照射回数を別々に数える。
ルビーレーにおける回数制限
ルビーレーザー(Qスイッチ付のものも含む)に関しては、治療回数に制限がある。(太田母斑、異所性蒙古斑、外傷性色素沈着は5回まで、扁平母斑とその他のものは2回)
アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーに関しては治療回数に制限がない。

※ 扁平母斑は適応がルビーレーザーのみなので、保険では治療は2回までしかできない。
その他の青あざ系の3種類のアザは、ルビーレーザーだけで治療すると5回までだが、その他のレーザー治療に切り替えれば回数制限がなくなる。

ここまでお読みいただいた方、お疲れ様でした。ご覧のように、あざのレーザー治療に関しては、保険診療にこだわるとかなりいろいろな問題が生じます。

  • 👎 テスト照射ができません。
    ごく一部の照射でも、1回の治療とみなされ、一連の治療に入ってしまいます。
    (治療費を請求せず無料で行えば別ですが、自費でテストすることも認められません)
  • 👎 照射間隔を3ヶ月より短くできません。厳密には3ヶ月を経過した日の翌日からでないと次の治療に入れません。
  • 👎 もうあと一押しができません。あと1〜2回照射したいが、回数制限でルビーレーザーが使えない、ということが起こり得ます。
  • 👎 違うレーザーを短い間隔を置いて重ねて照射する、病名に認められていないレーザーを一部使って比較してみるということができません。
  • 👎 広範囲の場合も、一度に全体照射しなければならない。(2回に分けると2回目の治療費を請求できないので事実上行えません。)
    ※ シールの麻酔薬(ペンレス)は1回に最大6枚(90平方センチ)までしか貼ることが認められていません。
  • 👎 面積の上限が決められているので、それ以上広範囲の照射をすると医療機関にとってはその部分が無料治療になってしまいます。

レーザー治療が保険診療に取り入れられた当初は、レーザー照射は「手術」の扱いでした。照射に関して専門的知識とハンドピースを安全適切に扱う技術が必須であったため、これは当然のことでした。
その後、各地の医療機関に様々なレーザー機器が普及し、機器の改良も進んで各疾患に対する基本的な照射条件が標準化され、照射時の危険性も減少するに及んで、レーザー治療は「処置」の項目に移されました。(これは非常に問題であると思っていますが、ここではその議論はしません)赤外線、紫外線療法などと同じく皮膚科処置の一項目と位置づけられたのです。

その際に、皮膚レーザー照射療法の実施上の留意事項として、様々な制限が加えられました。

  1. 単なる美容目的の照射は算定不可
  2. 3ヶ月を単位として、その間に1回だけ算定可能
  3. レーザー機器と病名との紐付け(対応していないものは算定不可)
  4. 病変の部位の数え方
  5. 治療の回数の制限

それぞれに問題の多い制限ですが、特に「3ヶ月」問題と2012年度に導入された回数制限は、医師の治療方針を左右する重要な制限です。知らない患者さんも多いので簡単にここで見てみます。

「あざ」は皮膚の色調異常ですが、見た目以外に機能的な不都合は通常ないので、あざの色を薄くする、ということが「美容を目的としていない」と言い切れる場合は少ないと思われ、どこまでが治療でどこまでが美容の範囲となるかは難しい問題です。ADMの新しい疾患概念の登場もあり、どの疾患を保険適応とするのか、更なる議論が必要です。

所期の目的、とはいったいどこまでをいうのでしょうか。あざを完全に消失させることであるのか、わずかでも色調を改善させることであるのか、一部を消して範囲を小さくすることであるのか、患者の苦痛が薄らぐことであるのか、レーザーの効果を確認することであるのか、様々な考え方が可能です。
3ヶ月間にわたり行われる治療とは経過観察を含むのか、観察は治療ではなく診察に過ぎないのか、レーザー照射以外の治療(内服、外用)も含むのかよくわからない記述であり、結局は一般的に「3ヶ月に1回レーザー照射可能」ということになっているのですが、それでいいのでしょうか。

短い間隔で照射した方が再発が少ないのではないかと思われても、3ヶ月以内の照射は治療費が請求できない、というのでは、敢えて行おうという医療機関は現れないでしょう。
数回に分けて部分照射することにして、最初に全体の面積分の治療費を請求した場合、途中で治療が中断したらどうなるのでしょうか。 上にも書きましたが、初期の目的を達することができない場合はどうなるのでしょうか。もやもやとした記述です。レーザー照射治療は3ヶ月に一度算定できる、とした方がよほどわかりやすいのではと思います。

<編集中>

〇〇手術は、△△症に対して行なった場合に算定する、というのと同じような文章ですが、決定的に違うのは手術の場合使用する機器や術式は術者の好みに委ねられていることです。レーザー治療の場合、規定されているのがレーザー機器の種類や照射間隔なので、手術に例えれば例えば△△症手術に対してはレーザーメスあるいは電気メスを用いて切開した場合あるいはナイロン糸を用いて縫合した場合に算定する、3ヶ月間は一連の治療過程であり同一の手術を再度行なっても算定できない、同一の手術は2回を限度とする、などとと同じような記述になってしまっています。
手術に置き換えてみればレーザー治療に関する規程の理不尽さがわかります。レーザー治療を手術の項目から処置の項目に移したために、こうしたことが起こったのです。本来治療法や治療機器の選択は症状に即して医師の裁量に委ねられるべきものだと思います。

肩にあるあざは上肢なのか背部なのか、どちらか面積の大きい方に含めるのか、上肢と背部の2箇所にまたがるもの(2部位)としてカウントして良いのか、という問題が生じます。脇腹のあざは腹部か背部か、頚部と胸部の境目はどこまでか、などでも同様です。手術と同じように露出部・非露出部のようにするか(これはこれで問題が多いが)、面積で規定するのが最も問題が少ないように思います。

初回治療から概ね3ヶ月を経過し、その次に照射すれば2回目という規定はそれなりにわかりやすいのですが、例えば間隔があいて1年後に来院した場合、診療上は初診です。その時の治療は1回目なのか2回目なのか。あるいは他の医療機関で何回か治療した患者さんが初めて来院した場合、当院では1回目になるのか、前医の分も通算するのか、通算するとしたらそれをどうやって確かめるのか。
例えば扁平母斑のように2回までと決められている場合、他の医療機関で2回治療したが治らなかった、という際にはもう保険で治療はできませんと答えるのか。住所や保険の種類等が変わっていて昔の治療について確認できない場合はどうなるのか。初診だから単純に1回目として治療して良いのか。
もしそうであれば、2回で完治しなかった場合は転職したり住所を変えたりして保険証を変えれば、延々と保険治療を続けられることになります。

ルビーレーザー治療には回数制限があるが、アレキサンドライトレーザーなどには回数制限がないことは上に書きましたが、それなら、二種類のレーザーを持っている施設で1回おきに種類の違うレーザーを照射したらどうなるのでしょうか。あるいは部分的に異なるレーザーを使用した場合はどうなるのでしょうか。悩みは尽きません。

シミやできもののレーザー治療

大江橋クリニックでは、主にQスイッチ付ルビーレーザーを用いて治療を行います。それは一体なぜでしょうか。

Qスイッチ

Qスイッチはレーザー発振器の途中に設置してQ値(大雑把に光の透過性と考えて良い)を変化させることにより非常に短時間の間に溜め込んだエネルギーを放出してジャイアントパルスを発生させる装置です。Qスイッチ付きレーザーの場合、例えばルビーレーザーでは通常数ナノ〜数十ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)という時間に1平方センチあたり数ジュールのエネルギーを照射します。

超短時間に照射されたレーザー光は吸収された物質を瞬時に加熱します。物体は小さいほど短い熱緩和時間をもつのが普通なので、このくらいの短時間では細胞内のメラニン顆粒などの小器官が熱破壊され、その結果メラニン顆粒を多くもつ細胞が死滅します。シミの部分にはメラニン顆粒をたくさんもつ角質細胞が蓄積しており、また表皮下の真皮層にも滴落したメラニン顆粒を貪食した組織球などの細胞がいるため、それらの細胞が死んで剥がれ、皮膚組織の再生が起こります。
表皮細胞の再生は通常あまりメラニン顆粒を持たない基底細胞が生き残って分裂することによって起こり、1週間程度で薄い角層ができて上皮化します。Qスイッチでないレーザーで長時間の照射を行うと、周囲組織にも熱の流出が起こるためより深い範囲に熱障害が起こり、やや深く皮膚が剥がれるため上皮化に時間がかかります。状況によっては瘢痕化して傷が残ります。
このように選択的にメラニン顆粒を持った細胞のみを傷害するため、いわゆるシミの治療にはQスイッチ式レーザー(ルビー、アレキサンドライト、YAGなど)を用います。波長により吸収性が異なるため、皮膚反応がやや異なりますが、いずれもシミの治療に用いられます。
大江橋クリニックではその中で最も使用経験の長いルビーレーザーを選択して導入しています。

Qスイッチ式ルビーレーザーを新機種に更新しました

昨今の世界情勢により半導体の入手が困難になる中、1年以上前からお願いしていたレーザーがようやく完成し2022年8月に納品されました。非常に優秀な機器です。旧機種も長い間活躍してくれましたが、やや出力が落ちスポットの周辺と中心とのエネルギー差が無視できなくなってきたため、他の機器と共に製造元に連れ帰っていただきました。お疲れ様でした。

CO2レーザーの特徴

CO2レーザーも1963年以来様々な分野で使われた非常に有用なレーザーです。
連続発振ができビームを細く絞って出血の少ない切開に用いるなど、形成外科分野ではレーザーメスとして使用されることが多いのですが、大江橋クリニックではウルトラパルスモードを主に使いイボや黒子の蒸散に用いています。

ピークパワーの高いウルトラパルスをさらに0.1秒ごとに断続的に用いて、直径0.1ミリ程度に絞った細いビームで点状に皮膚をけずりとっていく使い方をしています。

CO2レーザーも新機種に更新しました

このレーザーも上記のルビーレーザーと同時に新しいものに更新しました。旧機種とはほとんど性能は違いませんが、より細かな調整ができるようになりました。旧機種はガイドビームと実際に照射される赤外線の当たる位置が0.2ミリほどずれ、スポットも完全な点状ではなくなっていました。もちろん十分使用には耐えますが、非常に正確な治療を行いたいとき頭の中でズレを計算に入れる必要があり疲れるのが更新した理由です。手元に置いておく選択肢もありましたが、製造元にお返しすることにしました。長い間お疲れ様でした。
新機種は本当に優秀です。思ったところに正確に0.1ミリの誤差なくスポットを合わせてくれます。これからどんどん活躍してもらいたいと思っています。