皮膚科的な耳(外耳)のトラブル

耳の皮膚炎 … 耳がかぶれた・かゆい

耳の皮膚炎は治りにくい
アトピー性皮膚炎に伴う耳の皮膚炎の例
耳(外耳、耳介)は顔の両側にあって頭髪に覆われている場合もあり、頭の両側に突き出しているという位置と形の特性から、日常的に刺激を受けやすく、皮膚炎にいったんなると治るまでに時間がかかります。
耳の皮膚炎には次のような特徴があります。
- 日光の紫外線による皮膚炎(急性の日焼けや慢性の皮膚の変化)が起こりやすい
- 髪につける整髪料やシャンプーなどによる慢性の皮膚炎が起こりやすい
- 毛染めの染料などによるかぶれが起こりやすい
頭皮に症状があまりなく、生え際や耳だけがかぶれることもある - メガネやマスクのゴムなど耳にかけるものの素材によるかぶれが起こりやすい
- イアリングやピアスなど耳につける装身具によるかぶれやトラブルが多い
金属アレルギーのこともあれば、調子が悪いのに無理にピアスを使用したり、重すぎるピアスの常用やキャッチの締めすぎなどによる機械的刺激による場合もある
ピアストラブル参照 - 花粉症などによる季節的な皮膚炎が、特に外耳道(耳のあな)に生じることがある
- 頭皮と連続して起こる皮膚炎や感染症が耳に及ぶことがある
- 耳の水虫は痒くないこともあるので意外に気づかない
- 耳かきなどの刺激や細かい傷に起因する外耳道の皮膚炎でかゆみを生じることがある
- 耳にヘルペスや帯状疱疹ができることがある
水疱ができ痛みを伴うことが多いが、診断がつかずに重症化すると顔面神経麻痺などを引き起こすこともある
耳(外耳、耳介)に異常を感じたら、市販の塗り薬などを試す前に、皮膚科の診察を受けてください。
耳の皮膚炎の治療のポイント
- 思いがけないものが原因物質となっていることがあるので、まずは思いつく限りのものはいったん中止します。
- 毛染め剤などの他、使い慣れたシャンプー、ヘアスプレーなども原因になり得ます。特に長い間日常的に使用していたものが繰り返した刺激によってアレルギーの原因となる場合は、気づきにくいため使用を中止せず、なかなか治らないことがあります。
- 原因を探るため皮膚の一部を軽く削って調べたり、アレルギーの「血液検査」をすることもあります。ただし血液検査ではっきりと結果の出るものはそれほど多くありません。実際に使っている毛染め剤などによるパッチテストが必要なことがあります。
- パッチテストは現在のところ当院では行なっていませんが、信頼のおける医療機関をご紹介しています。パッチテストでは、どのような症状が出たら陽性と判断するか、の経験と技量が重要です。同じ症状を別の医師が判定すると結果が異なることもあります。
- 原因物質が分かれば避け、消炎や保湿のために外用剤を使用します。内服が必要なこともあります。症状の出方によっては、他の病院などの専門施設(皮膚科、耳鼻科、その他)をご紹介することもあります。
耳の接触性皮膚炎
刺激物質またはアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)によって、耳の皮膚が炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
頭皮や髪につけたものによって、頭の中にはかゆみがないのに耳だけかぶれることもあります。
原因物質との接触を避けないと、繰り返し症状が起こり、徐々に重症化することがあります。
治療法は原則的に体や顔の皮膚炎とほぼ同じですが、耳の特性上治りにくいことがあります。
ほとんどの皮膚炎は塗り薬と内服薬で治療しますが、外科的な処置や皮膚をこすったり切り取ったりする検査が必要な場合もあります。

耳のアトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の症状の一つとして耳に治りにくい皮膚炎が続くことがあります。
写真は耳の穴の中にも赤みが広がり、痒みのある状態です。真菌感染を起こしていることもあるので皮膚を擦って調べる検査も必要です。
- 慢性化すると皮膚が厚くなり、黒ずんでくることもあります。
- 短期間で治癒する病気ではないので、同じ医師の下で長く治療を継続する事が最も大切です。
- アレルギーの血液検査などで原因を探りますが、症状とは必ずしも一致ないことがあります。
- 季節性があるので、悪くなる時期を把握しましょう。
- のみ薬などがあっていないと思ったら、勝手に中止したり、医師を変えたりせず、処方した医師に必ず相談する事。
- 転医するときは、今までの治療法などを書いた紹介状をもらう事。
アレルギー科のページも参照してください
耳の脂漏性皮膚炎
頭部や生え際など耳の近くの皮膚が慢性の炎症を起こし、水疱ができたり赤くただれたりします。
毛穴に常在する真菌などが皮脂を分解し、炎症物質を作り出すのではないかと考えられています。
- 体質的なものといってもよく根気よく治療を続ける必要があります。
- シャンプーや髪の洗い方などを工夫することで改善することもあります。
- アレルギーの「血液検査」などは必ずしも有効ではありません。
- 基本的には炎症をおさめる外用剤での治療が中心となります。
耳の水虫
治りにくい慢性皮膚炎だと思って市販の外用薬などを付けていたが、実は水虫菌がついていた、という場合もあります。
身体の他の部位にあったものがうつることもあります。耳の穴の周囲などの赤いかぶれは要注意です。
- 診断をしっかりつけることが大切です。皮膚科専門医の検査を受けましょう。
- 赤みやかゆみは徐々に改善しますが、比較的治療に時間がかかります。
- 身体の他の部位にもできていることがあるので診察を受けましょう。