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大阪市北区医師会


皮膚/皮下腫瘍・軟部腫瘍

治療法解説 2

皮膚の表面にできた「皮膚腫瘍」(ほくろ、いぼなどと表現されます)、皮膚の中にできた「皮下腫瘍」、皮下脂肪より下の筋膜、骨膜などにできた「軟部腫瘍」(こぶ、脂肪のかたまり、しこりなどと表現されます)などの治療法について解説します。

各疾患の治療法の解説

臨床診断と治療法の決定

まず、腫瘍(できもの)の正確な診断を行ないます。皮膚科医と共同で診察させていただく事もあります。
皮膚腫瘍の多くは、肉眼的にもおよその診断がつきます。まず間違いなく良性腫瘍であり、最近大きくなって来たわけでもなく、症状もない場合は、患者さんが手術を希望しない場合そのまま経過を見ることもあります。
但し良性腫瘍がずっと良性腫瘍であり続ける保障はありませんので、その場合も数ヶ月に一度は診察を受けていただくようにお勧めしています。

通常は、患者さんはそのできものが気になり、取ってしまいたいと思って受診される場合が多いので、手術、あるいはレーザー治療、液体窒素による凍結療法などをお勧めする事になります。

皮下腫瘍の場合、通常肉眼的に確実に診断する事は難しく、およその診断を付けた上で手術所見を加味して最終診断に至る事がほとんどです。切らずに調べたいという事であれば、超音波検査やMRIなどの画像診断を行なえる施設をご紹介する事になります。

手術をお勧めする場合

皮膚・皮下腫瘍の最も確実な取り方は、手術による切除です。
少しでも悪性が疑われる場合、皮膚の深いところまで病変が及んでいることが予想される場合は、まず手術をお勧めします。

レーザーや凍結療法をお勧めする場合

浅い部分に限局した皮膚腫瘍で、あまり大きくないものに限っては凍結療法で取る事が可能です。
凍結療法は零下196度の液体窒素を患部に圧しあてて、細胞を凍結させ「凍傷」のように細胞を破壊します。診察室ですぐに行なえ、入浴等の制限もなく、麻酔の必要もないため、浅いイボなどの治療に用います。
凍らせる範囲や深さはいわゆる「手加減」ということになり、従って深い傷になる事を避けるため、少し加減して何度かに分けて行なう事があります。その場合、毎回処置料がかかります。

レーザーは保険を適用できませんが、小さい腫瘍の場合比較的簡単に治療でき、出血もなく、傷も腫瘍の大きさを大きく超える事はないので、イボや小さなほくろなどはレーザーをお勧めする事があります。

皮膚・皮下腫瘍、軟部腫瘍の手術

皮膚腫瘍・ほくろ・いぼ

「皮膚腫瘍」は通常皮膚そのものが盛り上がり、できものの色、質感が周囲とはっきり異なっていますので、皮膚ごと(というより皮膚そのものを)切り取るか削り取る必要があります。皮膚癌(皮膚悪性腫瘍)は皮膚腫瘍に含まれます。

皮膚を切り取る事になるため、手術すれば必ず皮膚に穴があき(皮膚欠損の状態)それを塞ぐために様々な工夫をする事になります。

※ なお、ウイルス性のイボなどうつるできものや、先天性の奇形に属するものも、見た目が似ており一般の方には区別が難しいので、便宜上皮膚腫瘍のところで解説します。

皮膚腫瘍の例
皮膚悪性腫瘍の例

皮下腫瘍・軟部腫瘍・こぶ・しこり

「皮下腫瘍」は通常皮膚の下(真皮から皮下脂肪層まで)に盛り上がりのあるこぶのようなものができ、皮膚自体の色、質感は周囲の皮膚と変わりません。可能なら皮膚は切開するだけか、ごく一部の切除に止め、中にあるできものを残りなくそっくり取り出す必要があります。

腫瘍を取り除くと、皮膚の下(皮下組織)の腫瘍のあった部分に空洞(デッドスペース)が生じ、そこに血や体液が貯留すると感染を起こして治療に難渋します。したがって、空洞を塞ぐための工夫が必要になります。

※ なお、皮下脂肪よりも深い筋膜、筋肉内、血管やリンパ管などのレベルにできる「軟部腫瘍」や、骨などにできる骨腫瘍も、便宜上皮下腫瘍のところで解説します。

皮下腫瘍の例

 

各疾患のもう少し詳しい解説

色素性母斑(ほくろ、黒子)・青色母斑

色素細胞性母斑、母斑細胞性母斑、メラニン細胞性母斑などとも呼ばれます。
「母斑」とは「アザ」のことであり、生まれながらに存在することを示しています。
実際には大人になり、特に30歳を過ぎた頃から目立って数が増えてくることが多いのですが、この場合も「眼に見えないほど小さなものが、もともとその場所にあり、徐々に拡大して眼に見える大きさになった」と考えられます。
生まれた時からある程度の大きさがあり、あまり盛り上がっていない場合は通常「黒アザ」と呼ばれることが多いのですが、組織学的には同じものです。ほくろの上に毛穴があれば、黒く長い毛が生えてきます。

ほくろそのものは通常悪性ではありませんが、黒いできものがすなわちほくろであるとは限らず、ほくろに似た皮膚がん(悪性黒色腫や基底細胞癌など)の場合もあります。
小さいうちに悪性かどうかを肉眼的に判断することは難しい場合があります。
最近はダーマスコープ(皮膚用実体顕微鏡)を用いることである程度見分けがつくようになりましたが、100%確実とはいかず、怪しいものは最終的には切除して精密検査を行なう必要があります。
(実際に直径1ミリ〜3ミリ程度の、肉眼的には普通のほくろのように見える黒い悪性腫瘍を切り取った経験は多数あります。その中には、ほぼ普通のほくろだと思って切り取ったが検査したら悪性であった、というものもあります。)

いわゆるホクロを美容的な目的でとる場合には保険適応となりませんが(→ 美容外科)上で述べたように皮膚のできものには悪性のものもあり、ホクロのように見えて違うものがたくさんあります。当院では皮膚科専門医が診断した上で、必要であれば手術的に切り取り、病理診断を行います。このような場合保険適応となります。
傷痕はできる限り小さくめだたなくなるような工夫をしています。切除法は部位によっても大きさによっても、またその人の仕事や日常生活によっても変わります。複数を一度にとる場合など、特殊なデザインを必要とする場合もあります。そうしたこともいずれ、このサイトに書く機会があると思います。

もちろん悪性のものなど、より専門的な治療が必要な場合は、しかるべき施設をご紹介いたします。

脂漏性角化症(老人性いぼ)

小さく点状のものはほくろや小さなしみ、そばかすと間違われる事が多く、また面状に広がったものは「シミ」と表現される事があります。顔にできるものは比較的大きくなりやすく、体にできるものは米粒大くらいまでで多発する傾向があります。症状はあまりなく(時にかゆみがあることもある)美容的な目的でとる事が多い腫瘍です(→ 美容外科)。
大きなものは皮膚に深く食い込んでいる事が多く、レーザーでは出血するほど深く削らなければならず、そうした場合は赤みや色素沈着が数ヶ月続きます。
このようなものは皮膚癌に紛らわしい事もあり、可能であれば手術的に切り取り、病理診断を行います。この場合保険適応となります。
傷痕はできる限り小さくめだたなくなるような工夫をしています。

 

皮膚線維腫

皮膚の表面にできる代表的なできものです。ごく小さければレーザーで蒸散することも可能です(→ 美容外科)が、通常は手術的に切除します。多発する病気もあります。きれいに治すためには形成外科の技術のある施設で治療を受けることをお勧めします。

皮角

多くは前述の脂漏性角化症の一部に、時には単独に発生して、その名の通り皮膚の表面から角のように長く突き出してきます。ごく小さければレーザーで蒸散することも可能です(→ 美容外科)。液体窒素の凍結を試みる事もありますが、多くの場合完全には取れず再発します。手術的に切除することをお勧めします。面積的には小さい事が多く、通常きれいに治ります。

アクロコルドン(スキンタッグ)

多くは首のまわり、腋窩などに多発します。1〜数ミリ大の柔らかいイボです。皮膚色の事もありますが徐々に黒くなります。
ごく小さければ鋏で切り取る事も可能です。ある程度大きくなると、茎の部分の血管が太くなるため、思いがけず出血して慌てる事があります。通常はレーザーで蒸散することをお勧めしています(→ 美容外科)。液体窒素の凍結をすすめる医師もいますが、周辺に色素沈着を残す事もあり、また完全には取れず再発することもあります。レーザーでとった場合、通常1週間程度できれいに治ります。体質によっては、赤みが点状に残り2週間程度消えない事もあります。

眼瞼黄色腫 → まぶたの手術|眼瞼黄色腫

眼瞼の腫瘍のところで詳しく説明します。
通常は単純切除します。ある程度大きくなると、切り取った後の瞼の皮膚が欠損するため、皮弁術などの形成外科的工夫をして瞼の再建を行なう必要があります。
コレステロールを溜め込んだ細胞が増えていることから、高コレステロールの治療薬を内服する試みもされましたが、通常あまり効果はありません。見えているよりも広範囲に深くまで広がっていますから、切り取る事は簡単でも、傷をきれいに治すのは難しい腫瘍の一つです。

 

汗管腫の典型的組織像  (北海道大学あたらしい皮膚科学より引用)

汗管腫 → まぶたの手術|汗管腫

通常は眼瞼の周囲に多発する腫瘍なので、瞼のところで詳しく説明します。
場合によりこめかみや額、鼻根部まで広がる事もあります。

小さいものがぱらぱらと多発する場合と、つながり合って局面状になる場合があります。本体は皮膚の下にあるのですが、皮膚が白っぽく盛り上がるため、針で穴をあけたり削ったりすれば治りそうに見えます。
実際には深いので切除しないと治癒しませんが、非常に数が多い場合や面積が広い場合、すべては切除しきれません。切り取った後の瞼の皮膚が欠損する場合は皮弁術などの形成外科的工夫をして瞼の再建を行なう必要もあります。
見えているよりも広範囲に深くまで広がっていますから、すべて切り取ってきれいに治すのは難しい腫瘍の一つです。

 

 

脂腺増殖

以下編集中

脂腺母斑

表皮母斑

副乳・副乳頭

副耳

ケロイド

→ こちらをご参照ください。

繊維腫

鶏眼(魚の目)

尋常性疣贅(いぼ)

伝染性軟属腫(水いぼ)

血管腫

悪性黒色腫

基底細胞癌

ボーエン病(上皮内癌)

有棘細胞癌

汗腺癌・脂腺癌

瘢痕癌

 

 

皮下腫瘍・こぶ・しこり

粉瘤・アテローマ・表皮嚢腫

3つとも同じできものの別名です。脂肪のかたまりなどといわれ、安易に切開されていることが多いのですが、赤く腫れているときには仕方がないとして、小さな時に切開してとってしまうと傷もきれいに治り、再発を防げます。

石灰化上皮腫(毛母腫)

脂肪腫・骨腫

額にできた脂肪腫は、骨腫と間違うほど硬いことがあります

脂肪腫はその名の通り柔らかいのがふつうですが、額の骨膜付近にできたものではその上に前頭筋の筋膜が覆っているために非常に硬く、触診だけでは骨腫と区別が難しいことがあります。
経験上、骨腫はどちらかというと額の真ん中(正中部)に比較的小さなこぶとしてできる事が多く、脂肪腫は真ん中よりも側頭部に近いこめかみの当たりに多いように思われます。画像診断(CT/MRI)をすればほぼ正確に分かります。
この他、額(というより眉の近く)にできる柔らかい皮様嚢腫(生まれつきある奇形腫の一種)も、皮下腫瘍というより、もっと深いところにある「軟部腫瘍」として扱うべき腫瘍になります。

手術費用は四肢軀幹軟部腫瘍摘出術に準じます。(骨腫は頭蓋骨腫瘍になります。)

いずれも比較的小さな切開から摘出することができます。額の横皺に沿って切開し、上下に傷口を広げて行きます。前頭筋や重要な血管、神経の下にある場合、それをよけながら取り出すため時間がかかります。
腫瘍の種類によって、それぞれうまくとるためのコツのようなものがあり、慣れていればさほど危険な手術ではありません。
やむを得ず細い神経を切断しなければならないこともあり、しばらく額に麻痺やしびれが生じることがあります。手術した側の眉が 意識的に上げられなくなったりすることがあります。
しかしこうした障害は一過性である事が多く、長くても数ヶ月でだいたい元に戻ります。

この他では皮下出血が最も多い合併症です。術後の止血と圧迫で予防しますが、場所によってはいわゆる青タン状態が1〜2週間続く場合があります。切開した傷はほとんどの場合、かすかな線状瘢痕で落ち着き、人目につくような残り方をする事は稀です。
眉の近くであっても視力などに影響する事はありません。順調に治れば1週間ほどで抜糸できます。

肩甲骨の周辺は脂肪腫の好発部位ですが、
弾性線維腫やデスモイド腫瘍などと鑑別が必要なこともあります

脂肪腫は全身どこにでもできますが、肩甲骨付近にできたものは気づくのが遅れて、かなり大きくなってから受診される方がほとんどです。直径10センチ程度になってようやく気づくこともあります。
柔らかい事が多いのですが、血管脂肪腫、線維脂肪腫のように他の組織と混じり合って成長したものは比較的硬く、肩甲骨付近にできる事で有名な弾性線維腫やデスモイド腫瘍などと紛らわしいこともあります。
大きくて硬い場合は、悪性化も視野に入れて慎重に摘出する必要があります。あまり大きい場合(当院の経験では10センチを超えるようなもの)は局所麻酔では難しく、入院設備のある病院をご紹介する事になります。

比較的小さな傷口から摘出することができますが、筋肉の下や骨に近い部分に発生したものは手術に時間がかかります。体の少し深いところにできる軟部腫瘍にはほかにも多くの種類があります。小さいうちに摘出されることをお勧めします。

手術費用は四肢軀幹軟部腫瘍摘出術に準じます。

神経線維腫

ガングリオン・粘液嚢腫

毛孔開大腫

皮様嚢腫

奇形腫

粘液嚢胞

神経腫

リンパ節・リンパ腫

平滑筋腫

骨腫・外骨種

静脈瘤