治療法解説 5
その他の手術
臍形成
いわゆるデベソは臍ヘルニアと呼ばれる状態(腹直筋の筋膜が左右に解離して開き、その間から腹膜が突き出した状態)であることが多く、診断がつけば健康保険で手術することが可能です。
盛り上がっている皮膚を切り取るだけでなく、左右の筋膜を寄せてしっかり閉じる操作が必要で、形をよく仕上げるためには適切な皮弁を選択する必要があります。術後がとてもたいせつです。腫れが納まり傷が固まるまできれいな形が保たれるようにテーピングなどをします。
手術直後よりむしろ術後しばらく、内臓痛のような軽い腹痛が残ることがあります。長期間の継続的な受診が必要になります。
→ こちらも参照してください。乳頭形成(陥没乳頭など)・副乳切除
陥没乳頭
陥没乳頭は授乳障害が予想される場合、健康保険の適応となります。ということは、今後妊娠の可能性がある女性である事が必要です。
乳房の発育に比べて乳管の延長が悪く、乳管の周囲にある索状組織(固い紐状の組織)が乳首を引き込むのが原因です。
軽く手で引き出すだけで出てくる軽症のものから、乳房の中央に深い穴があいたような重症のものまであります。
軽症のものは引き出した乳首が再び引き込まれないように周囲の皮膚をZ形成で寄せて首を細くするような手術を行ないます。これは比較的簡単なので、美容外科などでも行なわれることがあります。
重症になると乳管を傷つけないように索状組織を剥離して切断し、乳管をできるだけ延長し、再び引き込まれないように乳頭の下部に真皮弁を引き込んで支持組織を作成するなど比較的高度の技術を要します。傷は目立たない事が多いですが、体質によっては細い線状の白い筋が残ることがあります。左右揃った形のよい乳頭を作成するには、症状にもよりますが比較的時間がかかります。
当院では症状によりいくつかの術式を選択し、あるいは組み合わせて治療を行っています。かなり高度な陥没乳頭(乳頭欠損に近いもの)まで手術実績があり、様々なケースに対応できます。
副乳切除
副乳は意外に多い先天性の疾患で、脇の下から腹部にかけての乳房のライン上に生まれたときからあります。無症状のことも多いのですが、生理の周期にあわせて腫れたり痛みを覚えることもあります。通常は腋窩または乳房の外側上方に小さな赤ちゃんの乳首のようなできものがあり(副乳頭)診断がつきます。
健康保険には副乳切除の項目がなく、比較的小さなものは皮下腫瘍、軟部腫瘍などの扱いで手術します。局所麻酔で手術可能です。生理や妊娠時に乳汁が出てくるような乳腺の発育したものや、主要な乳房の乳腺組織と深いところで連続しているような場合、画像診断等を含め乳腺外科等で手術した方が安全と思われますので、そうした場合は専門施設をご紹介する事になります。
乳頭形成(乳頭縮小など)・乳輪縮小
乳頭が非常に大きくなったり複数に分裂したようになった場合、乳頭部の皮膚腫瘍として健康保険で手術し組織検査を行なうこともあります。
通常は美容的な目的で受診されることが多く、形よく仕上げる事が要請されるため美容外科での自費手術となります。形を保つための支持結合組織の発育が悪い場合があり、術後に再び大きくなる方もいます。
乳輪部の縮小も含め、形態が安定するまで数ヶ月の経過観察が必要となります。
(乳頭縮小等の美容的なものは → 美容外科)
腋臭症
有毛部皮膚切除法などといった、傷痕の大きく残る古い術式は現在あまり実施される事が少なく、健康保険では事実上、皮弁法のみが適応になると考えてよいでしょう。(以前皮膚切除手術を受け、まだ一部残存しているとか傷痕が残るという場合も、追加切除ではなく傷痕を形成外科的に治しながら残ったアポクリン腺のみを切除する方が良いでしょう。)ほかの術式では効果が乏しく気休め程度の結果に終わることが多いようです。
また美容外科等で選択されている超音波吸引法などは効果が不安定です。最近では内視鏡を用いた手術等も行なわれるようですが、費用対効果を考えると現時点でお勧めはできません。稲葉式などの皮膚を裏から盲目的に削り取る術式は、傷痕に悩んで受診される患者さんの多さを考えると、安易に受けるべきではないと考えます。
ボツリヌス毒素の注射が効果的であるかのような宣伝がなされていますが、機序を考えると効果は限定的であると思います。ボツリヌス毒素は多汗症の適応に関して保険適応が考えられているようですが、腋臭症(臭い)に関しては当院では注射はあまり効果がないものと考え、行っておりません。
→ こちらも参照してください。