大江橋クリニックでは美容医療を、長い人生をより健康で美しく、若々しく過ごすための予防的、健康増進的医療と考えています。
瞬間的、刹那的な美を追い求めるあまり、その後の長い人生に傷を残す破壊的治療は行なうべきではないというのが私たちの考えです。
美容外科でもそのような考えに基づき、主にコンプレックスの原因となっている傷痕や各部のバランスの乱れを解剖学的に正常に戻すという考え方に基づいて手術を行なっています。
耳介形成の場合
例えば耳介軟骨の変形を修正する耳介形成手術では、原則的に異物(シリコンインプラントやヒアルロン酸注入など)は使用せず、軟骨が不足して移植が必要な際もいきなり肋軟骨や鼻中隔軟骨など別の場所から軟骨を採取することはしません。反対側の耳から軟骨を採取することもどうしても足りない場青を除き原則的にしていません。できる限り手術する側の耳の中だけで軟骨を移動させて修復しています。
手術の過程で皮膚が不足する際には皮弁術や全層植皮術を併用することがありますが、その時にも手術する耳の周囲の皮膚を移動させることを一番に検討します。
いわゆる柔道耳や耳介ケロイドなどはご本人の体質が密接に関係しているため、手術治療にとどまらず術後の長期的な介入が必要です。このため頻回に通院していただくこともあり、手術したら終わりという考えはとっていません。卒業まで時間がかかることをご理解ください。
耳介の手術は保険の場合も美容の場合も同じ医師が行なっており、保険の適応がない立ち耳などと保険適応の形成外科で行う耳介形成手術に技術的な優劣はありません。
耳の手術は技術的難易度が高く、費用が高額になるため、適応があれば出来るだけ保険を適用します。費用負担を除けば手術法はどちらも似ています。
眼瞼形成の場合
眼瞼下垂症手術などの瞼の手術に際しても、できる限り自然な構造に戻すことを第一に考え、不必要な切除や切断は避けています。
重瞼埋没法は最近複雑に多数の糸をかけて取れにくくする術式が流行していますが、できる限り単純なループで形をつける方法を変えるつもりはありません。簡単に形がつかないようであればそもそも埋没法に向いていないのだと考えています。
切開に際しては生まれつきある重瞼ラインからできるだけ離れないようにラインを工夫しています。皮膚を切除する際にも瞼全体の皮膚を計測し、解剖学的に無理のない切除ラインを決めて切開します。ラインの取り方は経験に基づき、計測した長さと皮膚の流れを勘案して決めています。患者さんに鏡を渡して自分で決めさせ責任を取らせるつもりはありません。希望は聞きますがそれを医師が技術的に可能な方法に翻訳して手術します。不自然に目尻を釣り上げたり、目頭切開を追加することも避けています。
筋肉や脂肪に操作を加える際には正常な構造からの逸脱を見極め、出来るだけ無用な切除をせずに元に戻す方向を探ります。目尻切開など眼瞼の構造を壊して涙の流路を阻害する術式は採用していません。ハムラ法などのすでに一般的になった術式にも、正常な構造を壊して下眼瞼の構造を不安定にする欠点もあり、適応は慎重に行っています。下眼瞼の手術はダウンタイムが大きい方法を採用していますが、筋肉と皮膚の位置関係を是正して長持ちする構造を作るため必要と考えています。単純に皮膚や脂肪を切除しても(いわゆる脱脂も含む)短期間で効果が失われ変形してくるからです。
レーザー治療、美容皮膚科診療の場合
美容総合レーザー治療は大江橋クリニック開院以来の人気治療です。いくつもの治療方法を組み合わせていますが、それぞれ出来るだけダウンタイムを作らず肌の活性化を図る目的で選ばれています。用いるレーザーの波長選択や順番にも工夫をしています。ケミカルピーリングやイオン導入などのメディカルエステ的治療と他種類のレーザー治療とを同時に行なって肌の活性化を図る治療は、大江橋クリニックが世界に先駆けて始めたものです。絶えず改良を続け、最近も内容に大きな変更を加えました。おそらく他の医療機関では真似のできない手技になっていると思います。レーザー光の性質や原理を踏まえての変更は今後も続けていきます。
美容皮膚科では美容診察とレーザー治療を主に扱っています。内服、外用治療を基礎とし、ある程度軌道に乗ってきた肌の維持にはレーザー治療をお勧めすることが多くなっています。レーザー治療の理論的背景をご理解いただくのは難しいのですが、皮膚の再生と活性化のためには優れた方法だと考えています。
詳細は美容皮膚科のページやレーザーの解説ページでご確認ください。
ご相談の多くが「見た目の改善」です
開院以来出来るだけ保険診療を中心に診療してきましたが、(痒い、痛い等の訴えを除き)ご相談の多くが見た目に関わるご相談であることから、多くの患者さんの治療目的が保険診療には馴染まないのではないかと考えることが多くなりました。
美容外科の主な治療対象としている耳や瞼の変形だけでなく、イボやホクロ、できもの、ニキビ・ニキビ痕、肌荒れや赤み、くすみ、シミやあざ、傷痕、ケロイド、ピアストラブル、臍や乳輪乳頭の形、などさまざまな症状が本来は美容外科・美容皮膚科で扱うべきものです。
美容外科・美容皮膚科に対して「他人より美しくなるために、健康で正常な肉体に故意に手を加える」というイメージを抱いている人がいますが、これはあまりに一面的な見方です。実は「他人より美しくなりたい」「もっと美人になりたい」という目的で美容外科・美容皮膚科を訪れる患者さんは非常に少数です。(タレントや女優を目指す方などごく一部に限られています。)
多くの人にとって、美容外科・美容皮膚科は「深刻な病気とまではいえないにせよ、整っているとはいいにくい、美しいとはいってもらえない外観をなんとか人並みに改善したい」「社会生活を送る上で障碍(しょうがい)となっているコンプレックスを解消したい」人が訪れる場所なのだと思います。
こうした見方に立ってみると、大江橋クリニックの患者さんの多くは、実は美容医療で対処すべき患者さんなのでした。
そこで、お悩みの種類を予約フォームなどの事前問診を通じて診察前に具体的に明らかにしていただき、まずは自費診療としてご相談に乗り、健康保険の範疇でも治療可能な場合は健康保険に切り替えて診察を続ける方が、現在の診療体制により適合していると考えるようになりました。
美容診療は自由診療です
美容診療(=病気の治療ではなく、健康や若さ、美しさを保つための医療)は「自由診療」ということになります。
「自由」とは、その内容も、かかる費用も、患者さんとクリニックとの契約によって自由に決めてよい、という意味です。患者さんに「医療の内容や質を選択する自由がある」といってもよいかもしれません。
しかし、一方で「診療」である以上医学的に根拠のない方法や、社会通念状認められないような医療(例えば、健康や命を損なうことを目的とした医療)は行ってはならないでしょう。
保険診療は決められた枠から出られません
美容診療は、基本的に健康保険の適応がありません。
(もっぱら美容を目的とする治療には保険を適用しないと法律で決められています)
日本における健康保険制度は、一般的な意味での「保険」ではありません。「保険」は将来自分の身に降り掛かるかもしれない万一の事態に備えて、あらかじめ少額の費用を保険会社に支払い、一旦事故に見舞われた際には、払込んだ額に応じて救済が受けられるという仕組みです。1億円の保険金を受けとるには、それなりの保険料を支払い続けなければなりません。
それに対して健康保険は、自分の意思とは関係なく、収入に応じて支払うべき保険料が定められ、そのお金は現在病気にかかっている他人のために使われます。将来のために前もって積み立てておくことはできません。病気になったときに健康保険に加入していない人は、保険治療は受けられません。自分が病気になったときにも医療は支給されますが、多く支払った人に手厚い治療が行なわれることはありません。医療の質は、国が一律に定めています。保険で治療を受けられる病気の種類も決められています。
つまり、保健医療は互助的な仕組みに基づいた「社会保障」であり、誰にでも一律に保障された最低限の医療、ひどい言い方をすれば「死なない程度の」医療しか保障していません。支払った額に応じてリターンが得られるという制度ではないのです。
憲法は私たち国民に「健康で文化的な(最低限度の)生活を保障」してくれていますが、現実には健康で文化的な生活は「自分の力で獲得し、維持しなければ」保つことはできません。