スタール耳(両耳修正のうち右耳)術後1ヶ月 外傷性瘢痕(両耳修正のうち右耳:軟骨移植症例)術後1ヶ月
耳たぶを大きくする、耳の形を変える、立ち耳の角度の変更、その他、耳(耳介、外耳)については様々な治療が可能です。ピアスの孔を塞いだり切れた耳たぶを修復したり、耳にできたできものやケロイドを切り取り、その欠損を再建する事もできます。副耳や耳瘻管などの先天的疾患を手術したり、付随するトラブルも扱います。
ただしその治療には、健康保険の適応とは見なされないものも多く含まれます。それは「耳の形」が「耳の機能」と密接な関係になく、「耳の形」の修復の多くが「美容的な問題」と見なされるためです。
耳は瞼や鼻、口のように顔の正面にないため、社会生活上の「社交の道具」としては地位が低いのです。耳輪埋没症など一部の形の異常は 健康保険 の対象となりますが、それは「眼鏡やマスクをかけるのに不便である」といった機能的な問題が関係するからであると思われます。 美容外科で自費で行なえる手術に関しては 主に→ こちら で解説しているのでご覧下さい。
耳介形成手術は耳の形を修正して正常に近づける手術です。
健康保険適応の3割負担で、耳介軟骨形成を要する場合65,000円程度、
耳たぶなど耳介軟骨を切らないで行なえる手術で30,000円程度です。
ただし、算定条件として(厚生労働省通知:実施上の留意事項について)耳介形成術は「耳輪埋没症、耳垂裂等」に対して行なった場合に算定する、とあり、その他の耳介の変形に対しては明確に規定されていないためグレーゾーンです。
立ち耳やスタール耳、折れ耳など、耳輪埋没症以外の先天的な変形、柔道耳などの外傷性の変形などにこの手術が算定できるかはすべて「等」をどのように解釈するかにかかっています。
当院で行ったスタール耳、柔道耳、(先天性でない)耳垂裂(外傷による耳切れ)、耳介腫瘍摘出後の耳介欠損に対する再建等で保険請求が通った例がありますが、請求が通るか拒否されるかは、その時々の審査員の考え方により様々です。
近年ますます適用が厳しく制限される傾向にあり、今後は適応を狭くとり耳輪埋没症、耳垂裂(先天性のもの)以外は保険適用できないと考えた方が良さそうです。
耳輪埋没症、またはこの軽症型のいわゆる袋耳(コップ耳、折れ耳、埋没耳など、形によって様々な呼び方がある)は、軟骨の発達が悪く十分に展開されなかった場合が多く、従って正常側に比べて耳自体も小さいものです。小耳症のごく軽度のものと考えてもよいかもしれません。この種の形成異常には「スタール耳(対耳輪に第3脚があるもの)」なども含めて考えてもよいと思われますが、健康保険上は明確な規定がありません。
健康保険適応の場合、手術料片側65,000円前後
複雑な軟骨形成を伴う場合、軟骨移植を伴う場合は手術料はもう少し高くなります。(自家骨移植、複合組織移植、植皮、皮弁形成などの術式が加算されるため120,000程度かかります。)
耳垂裂とは、耳垂(耳たぶ)が丸い形に整わず、2つに避けたように見えるものを言います。正常側に比べて耳たぶ自体も一部が欠損したように小さいものが多いようです。
ピアスによる耳切れなどは外傷性の後天的な耳垂裂に含めて考えてもよいという医師も存在しますが、健康保険上は適用が難しいようです。
ピアスの孔が長年の間に縦に伸びて結果的に耳たぶに切れ込みが入った場合などは、耳垂裂とするには無理があり、当院では特別な事情がある場合を除き自費とさせていただきます。
ピアス耳垂裂は裂けた部分の皮膚を一部切除するとともにZ形成を行なう事で、かなりの程度まで目立たなくできます。くわしくは「耳介形成術(美容)」のページをご参照ください。
健康保険適応の場合、手術料片側30,000円前後
複雑な形成術を行う場合は手術料はもう少し高くなります。(複合組織移植、植皮、皮弁形成などが加わるため70,000円程度になることがあります。)
耳輪埋没症の例
スタール耳の例
スタール耳の形は様々で、手術にはそれぞれ工夫が必要です。
[ 日本小児遺伝学会 国際基準に基づく小奇形アトラスより引用 }
先天性耳垂裂の例
(治療経過は左を参照)
耳垂はほとんど欠損している
小耳症は通常片側の耳介が極端に小さく、痕跡的であったり位置の異常を伴い、外耳道が欠損している場合もあります。
通常はまず自分の肋軟骨を用いた耳介フレームを作成し、耳介の部分に移植します。そのままでは頭に張り付いたような耳になってしまうので、その後二期的に耳起こし(耳介挙上)を行なって耳介の裏側を作成します。
軟骨移植を必要とする手術は全身麻酔が必要となり、入院設備のない当院では行えません。耳の形の修正、脱毛、その他の二次的なトラブルは対応可能です。健康保険で行なえる場合もあります。ご相談ください。
形成外科ではこうした耳の形の異常も扱います。後者は小学生ぐらいになって膿が出るなどのトラブルを起こすことも多く、可能ならば早めに手術をお勧めします。
副耳(介)切除術 健康保険適応の場合、手術料片側1カ所7,500円前後
軟骨が大きく耳介と連続していたり、頬、顎など特殊な部位に存在する場合、手術料はもう少し高くなります。(腫瘍摘出、皮弁形成などで対応するため)
先天性耳瘻管摘出術、耳後瘻孔閉鎖術 健康保険適応の場合、手術料片側1カ所12,000円前後
軽度のものは内服薬と皮膚科的処置で治まることもありますが、不良肉芽が生じたり、ちぎれてしまったものなどは、手術が必要となります。二つに切れた耳たぶを元の丸い形に戻すのは簡単ではありませんが、切開のデザインを工夫することにより、ほぼ元通りの形にできます。ケロイド体質の方を除き、傷痕もほとんど目立たなくなります。
ただし、手術費用は上で説明した通り、健康保険で行なうには無理がある場合も多く、自費手術として対応させていただきます。
その場合の費用は、美容外科の該当部分をご覧下さい。
(ピアス穴あけ、穴塞ぎなど美容的なものは → 美容外科)
この症例の治療結果は美容外科の該当部分をご覧下さい。
耳の軟骨は前葉と後葉の二枚が貼り合わされたようになって形成されています。
強い衝撃などでその二枚の間に出血すると、軟骨が袋のように変形して内部に血が溜まり膨れてくる事があります。
きわめて早期(数時間から1日程度)であれば、内部の血液を抜き、裏と表からキルティングのように糸で縫い合わせる事で元に戻すことができます。
再び血が溜まらないように軟骨の一部を切除して穴をあける事も有効な手段です。
しかしある程度時間が経つと、血液の細胞成分が吸収されるとともに、軟骨の内張りとして薄い膜がはり、永続的なカプセルが形成されて中に水がたまった状態が続くようになります。更に内部の細胞が増殖して不完全な軟骨を形成し、いわゆる柔道耳のように軟骨の塊を形成してしまうこともあります。
こうなると、軟骨の一部を切除したり形よく削りなおし縫合して、耳の形を再建する必要が出てきます。
柔道耳のような場合は一旦切除した軟骨を形成して位置を換えながら元に戻し、寄せ集めて耳を造る必要も出てきます。
このような場合、明確な規定はありませんが、耳介形成手術として健康保険を適応しても良いのではないかと個人的には考えています。しかし、保険適応が認められるかどうかは保険者(支払い側)の意向もあり確実な事が言えません。
レセプトにコメント(症状詳記)を書いても認められない場合も多く、後日返戻分(保険者によって保険の支払いを拒否された部分)に関して追加費用をお支払いいただく場合もあり得ます。こうした事例が増加したため、現在では多くの耳介手術は自費とさせていただいております。
ICD10分類 > M00-M99 筋骨格系及び結合組織の疾患 > M95-M99 筋骨格系及び結合組織のその他の障害 > M95 筋骨格系及び結合組織のその他の後天性変形 > M95.1 花キャベツ状耳
耳輪の内側を切開するので傷痕は目立たない。
耳のできものは大きく分けてこの二つが代表的ですが、治療方針は大きく異なります。どちらも手術になりますが、ケロイドの場合、手術後に長期間のケアが必須です。場合により内服薬、注射、装具など様々な治療法を組み合わせます。
耳のできものの代表です。腫れて痛い場合はまず抗生剤などの内服で症状を治めます。小さく切開して排膿させることもあります。切開排膿では完治させる事は難しく、後日本格的な摘出術が必要となります。
手術はできるだけ耳の裏側から(表側に毛穴がある場合は表側から)毛穴の周囲を切開してくり抜くようにカプセルを摘出します。小さな種のような腫瘍が多発している方もあり、片耳から数カ所〜十数カ所摘出する事もあります。通常は赤みが消えれば気になる変形は残りません。
不適切なピアス孔の管理から、ピアス孔の前後に固くピンク色のできものが盛り上がってきます。大きなものは梅干し大程度になることもあり、また前後に発育したものでは鉄アレイのように耳たぶを貫通していることもあります。治療方針は完全摘出です。
ケロイドは手術しても再発する事が多く、通常は手術摘出は勧められません。しかし、耳の場合は異物が核となって反応性に発育した腫瘍の性質を持つため、完全に摘出すると治癒する事が多いのです。
とはいえ、大きなものを完全摘出すると耳たぶの組織が欠損し、そのままでは変形が残ります。
こうした場合は皮弁術などを用いて耳介を再建する必要があります。耳介腫瘍摘出+皮弁形成術という扱いにするか、耳介形成という扱いにするかは議論が分かれるところですが、健康保険では前者の方がまだ認められやすいようです。
欠損が大きい場合や単純に縫合すると左右差が大きくなる場合は、何らかの方法で穴をふさがなければならない。
この場合は耳介後部から作成した皮弁を耳垂の中を通して前方に引き出して再建した。反対側の耳たぶが比較的大きいので、それに合わせなければならない。
この症例のようにケロイド自体が大きい場合はできる限り皮膚を温存して、くり抜くように切除しなければならない。
それでも内部の組織量が足りないので多少の変形は避けられない。
欠損が大きくなければ縫い寄せて
穴を閉じる事もできる。
(鼻尖・鼻翼縮小等の美容的な相談は → 美容外科)
唇裂鼻などの形の修正には軟骨移植や唇の手術を伴うものも多く、術後の長期間のフォローが必要ですが、当院では細かな修正にもできる限り応じております。
口唇を薄くする手術などの美容的な相談は → 唇(くちびる)のご相談 をご覧下さい。
唇裂鼻などの形の修正には軟骨移植や皮弁手術を伴うものも多く、術後の長期間のフォローが必要ですが、当院では細かな修正にもできる限り応じております。