どうやったら保険適応の条件をクリアできるのか頭を悩ませるより、患者さんの症状に合わせて最善の照射間隔や回数を考え、今できる方法をできるだけ組み合わせて治療効果をあげる方法を工夫する方が、結局は患者さんのためにもなるし、治療する立場としてもストレスが少ないのではないか。
そう考えるに至り、レーザー治療を行うに当たっては保険適応の有無を考慮しないことにしました。
そうは言っても基本的に、大江橋クリニックのレーザー治療は自費だからといってそう高額ではありません。
大江橋クリニックで使用している色素レーザーは院長が直接個人輸入した機器なので保険適用が認められていませんが、最適な治療をリーズナブルな金額で行なう事を心がけております。
1回数万円の治療を間隔をあけて、数ヶ月に一度数回。もちろん症状によって効果に差はありますが、通常は1回の治療ごとに気になっていた色は目に見えて薄くなっていくものです。具体的な治療法については以下の項目をお読みください。
赤あざには様々な種類がありますが(日本皮膚科学会の皮膚科Q&A Q12を参照してください)、主なもの(保険治療が受けられるもの)についてのみ解説します。
保険での治療をご希望の場合、大江橋クリニックでは行えないので他の医療機関をご紹介しています。
単純性血管腫
生まれつきある平らな赤あざ。
大人になると部分的に盛り上がってくることがあり、お子さんのうちに治療した方が成績はよいようです。数回の治療でかなり薄くなります。しかしあざの性質上、完全に消えるとは限りません。
大江橋クリニックではシナジー・マルチプレックスを用いて治療します。
(同じ会社製のシナジーJ とは違う機種です。健康保険適用なし:自費治療になります)
シナジー・マルチプレックスの特徴は、既存の健康保険適応機種(Vスター、VビームやシナジーJ )等と同等の波長の色素レーザーと同時に、波長1064ナノメートルのYAGレーザーを同じ患部に照射できる事です。
マルチプレックスモードでは、同じハンドピースから色素レーザーに続いてYAGレーザーが一定の時間差で連続して照射されます。
この「色素レーザーパルス>ディレイタイム>YAGレーザーパルス」をそれぞれ調整する事により、単に2種類のレーザーを別々に照射した場合よりも治療効果を上げることが期待できます。
もちろんマルチプレックスモードの単回照射だけでなく、症状にあわせパルス径や照射条件を変えて同じ場所に数回の照射を繰り返すなど、自費ならではの自由な治療法を選択できます。
レーザー治療費は診察の上決定します
実際の治療に当たっては、細かい面積計算は行なわず、切手大1万円、名刺大3万円、頬から顎3.5万円、顔面半分5万円(消費税別)などのように大雑把に概算で治療費を決め、患者さんの同意を得て治療を行ないます。保険治療で決められている10平方センチ単位で治療費が小刻みに上がるシステムとは異なります。
小部分のテスト照射は税込11,000円程度です。
ただし自費診療のため診察料(美容指導料)2,200円等が別途かかります。
苺状血管腫(盛り上がった赤あざ)
生まれて数週間目ぐらいから急速に盛り上がってくる赤あざです。
いろいろな治療法がありますが、小さなものでは放置しておいても小学校に上がる頃までに小さく萎んで消えてしまうこともあるため、未だに放置をすすめる小児科医・産科医もいます。
しかし大きく盛り上がったものは、いずれ縮小することが多いとは言っても、完全には消えずに残ることがあります。
顔面など目立つところにあれば、消えないかもしれないのに数年間放置する決断をするのは難しいものです。
消えない場合は大人になってからレーザー治療を行うことになりますが、皮膚が瘢痕化しているため効果が薄く、結局切除手術の対象になることもあります。
→レーザーと手術の総合治療・苺状血管腫の例を参照
数年前まではレーザー治療が主流でした。レーザー治療の開始時期は早ければ早いほどよく、見つけ次第、できれば盛り上がる前に治療するのが結果が良いようです。
近年では血管腫が生後に盛り上がってくる仕組みの解明が進み、血管内皮の過度な成長を抑える内服薬治療が試みられるようになりました。小児科や小児形成外科主導で重症なものから内服薬治療が行われるようになり、2016年には小児用シロップが発売されたため、今後は内服治療が主体となっていくのではないかと思われます。
ただし内服薬治療では血圧低下など思わぬ全身性の副作用が出ることもあり、入院治療や服用後しばらくの経過観察が必要です。
小さな血管腫であればレーザー治療やドライアイス治療などの局所療法の方が、結果的には素早く治療を進めることができる場合があります。
レーザー治療費は診察の上決定します
実際の治療に当たっては、細かい面積計算は行なわず、切手大1万円、名刺大3万円、頬から顎3.5万円、顔面半分5万円(消費税別)などのように大雑把に概算で行ないます。小部分のテスト照射は税込11,000円程度です。
ただし自費診療のため診察料(美容指導料)2,200円等が別途かかります。
毛細血管拡張(赤ら顔など)
顔面や体などにある毛細血管は通常目に見えませんが、拡張して皮膚全体が赤みを帯びたり、あるいは細い糸くずが絡まり合ったように目に見える状態になることがあります。
紫斑(皮下出血)の起こるレベルで強く照射すると、不要な血管が破壊されて消失し、数回の治療でかなり改善します。ただし、症状により再発することもあり、また紫斑が生じると日常生活に支障があるため、美容的な目的で照射する場合は通常弱目のエネルギーで照射し長期の加療が必要となります。
治療費は上記シナジーの治療に準じます。
赤面症にはレーザー治療はお勧めしません
毛細血管拡張に良く似た症状に、しゅさ(いわゆる赤ら顔)や赤面症(時間や環境によって赤みが短時間に出たり消えたりします)などがあり、これらはレーザー治療の前に別の治療法を行なうべきです。
しゅさ(いわゆる赤ら顔)は内服治療でかなりの程度改善します。レーザーは良い治療法ですが、レーザー単独ではなく他の治療法を併用する方が効果が上がります。赤面症は血管の拡張収縮が短時間に起こり症状が動的であり、レーザー治療はあまり効果がなく、むしろ心療内科などで心理治療を行なうべきです。
補足: 下肢静脈瘤
細い静脈が皮膚表面に赤く、あるいは薄青く浮いて見える程度のもの(直径1ミリ以下の表在性血管)はシナジーのマルチプレックスモードが最適です。ただし、静脈を確実に閉塞させるには強い出力が必要となり、やや痛みの強い治療となります。
青いこぶが下肢の皮下にたくさんできる重症のものは、従来入院の上ストリッピング手術(皮下の血管を引き抜く手術)が必要とされてきました。
軽症のものであれば、局所麻酔手術で皮膚を小切開し、静脈のこぶになっている部分や不全交通枝(弁が壊れて深部静脈と繋がった血管が逆流している部分)などを部分切除・結紮を行なう事で改善できます。このような手術を形成外科で積極的に行っている施設もあります。
しかし現在では血管内レーザーなど強いエネルギーを照射できるファイバーを血管内に入れて、血管内部から焼灼する技術が普及してきたため、注射で行なう硬化療法や接着剤注入と組み合わせて行う治療が効果的です。この方法は血管に精通した血管外科の医師が行なうべきであり、最近では形成外科で行う施設も含めかなり増えてきました。当院では、院長が開業前からお世話になっている熟練した血管外科専門医をご紹介しています。
静脈瘤のレーザー治療費
部位や面積、血管の深さなどで細かく設定を変える必要があり、実際に症状を拝見してからの相談となります。
通常1〜数万円程度の治療になります。