大江橋クリニックは眼瞼下垂症の診断・治療に力を入れています
手術を成功させるためには、まず正しく診断することが大切です
「眼瞼下垂」という言葉は近年大変ポピュラーになり、瞼の美容について関心がある方なら知らない人がいないというほどになってきました。それに伴い多くの美容外科や形成外科、あるいは眼科で「眼瞼下垂の手術」が気軽に行われるようになっています。皆さんもこのページにたどり着くまでに、たくさんの宣伝ページをご覧になってきただろうと思います。
一方で「眼瞼下垂症」をきちんと診断・治療できている医療機関は決して多くはありません。多くの医療機関で、診断があいまいまなまま、あるいは全く診断をつけずに患者さんの希望に従って、様々な「眼瞼下垂」の手術が安易に行われており、不本意な結果に苦しんでいる患者さんがたくさんいます。医療機関も手術数何千件何万件と誇る前に、適切な診断技術を磨いてほしいと願っています。
眼、中でも瞼の形はひとの容貌の中心であり、その人の印象形成に決定的な重要性を持っています。特別な意図や前衛的な手法でもない限り、目の形を描かない似顔絵はあり得ません※。眼瞼下垂は、人の外観に影響を与える最も頻度の高い疾患の一つです。
※ 目を描かない肖像画の例:Eugène Anatole Carrièreの婦人像など 1895ころ(カリエールは好きな画家の一人、初期の写実から徐々に色彩と輪郭を消し去っていった)
眼瞼下垂は高度になれば日常生活に不便をきたしますし、眼瞼下垂に起因して肩こり、頭痛、不眠、うつ、疲労などさまざまな不快な症状の原因ともなります。また原因も多様で、さまざまな神経疾患や内分泌疾患など全身性疾患の部分症状である可能性もあります。眼瞼下垂を疑う人は、形成外科や眼科、最近では美容外科などを受診することになるので、診察を担当する医師には的確な診断ができる知識と経験が要求されます。
眼瞼下垂症の治療法はまず手術ということになりますが、鑑別を要する類似疾患には薬物療法などで改善できる病気もあります。どのような治療方法を取るかにより患者さんの生活改善度も大きく変わってくるので、診断はとても重要です。また手術法も、欧米人とは瞼の構造が異なる我が国の人には、それに相応しい方法が必要で、安易に海外の教科書に頼ることはできません。
最近では美容外科や形成外科の領域で活躍している多くの医師が、単独で、あるいは共著の形で眼瞼下垂の手術法について発表するようになりましたが、まだ見逃されているポイントも多く、殊に視機能の改善と美容上の要求の兼ね合いについては医師によって意見が異なることもあります。ここに私が普段診療の中で行っている診断法と手術の要点についてまとめてみることも無駄ではなかろうと思い、不十分ながら現在までの知識に従って眼瞼下垂の診断と治療について書いてみたいと思います。
内容は大変独善的なものですし、手術法については眼瞼挙筋前転術を応用したものに限っています。症例写真は大江橋クリニックを開業して以降、クリニックで行った手術に限り、個人情報保護に配慮して掲載することにしました。成功例ばかりをまとめたものではなく、むしろ苦労した症例を中心にしています。
眼瞼下垂症の手術は決して簡単なものではなく、毎日が悪戦苦闘の連続です。それでも患者さんの笑顔に接する喜びが大きく、この仕事を続ける原動力になっています。内容は診療を続ける限りどんどん改定される予定で完成を見ることはないと思います。興味のある方はどの項目からでも目を通してみてください。
診断→治療の順で書き進めている途中なので、未完成部分は欠落が多かったりレイアウトが崩れたりしています。ご容赦ください。
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略歴:京都大学医学部卒業 京都大学形成外科学教室同門会所属 兵庫県立尼崎病院在籍中に形成外科学会教育動画「眼瞼下垂症の手術」作成スタッフとして年間約60症例の手術動画の撮影と編集に参加、眼瞼下垂症手術の基礎を学ぶ。制作・著作: 大江橋クリニック院長 井上 研
京都大学医学部附属病院、兵庫県立尼崎病院、冨士森形成外科、国立療養所千石荘病院、Marienhospital Stuttgart、大城クリニック、城北病院などを経て大江橋クリニックを開院
眼瞼下垂症手術、耳介形成手術、皮膚レーザー照射療法等を専門領域としている眼瞼下垂症の主な治療経験
城北病院(現・北山武田病院)時代、約5年に渡りまぶた専門外来の診療を行うとともに、並行して京都専売病院眼科で眼瞼下垂の出張手術を担当。
大江橋クリニック開業後は眼瞼下垂症とまぶた関連の手術を専門領域の一つとして積極的に行っている。