レーザーの発明と発展
レーザーの理論と実用化の歴史(あらすじ)
レーザー(LASER: Light Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字を連ねた造語 直訳:放射の誘導放出による光の増幅)の基礎となる理論は1917年、アインシュタインによって提唱されました。
最初は電磁波(マイクロ波)の性質に関する理論であったのでメーザー(MASER)と呼ばれていましたが、1959年に光(可視光も電磁波の一種です)でもメーザービームが発振できることが示され、しばらくはOptical MASER(光学的メーザー)と呼ばれていたのですが、後にM(マイクロウェーブ)をL(ライト)に変えてレーザー(LASER)という言葉が生まれました。
翌1960年に、最初のレーザー機器(ルビーレーザー)がアメリカでメイマンにより試作され、その有用性からすぐに軍事目的で実用化されました。
※ 左図はルビーレーザーの模式図。サイエンスグラフィックス社のサイトから引用させていただきました。
メイマンが初めてルビーレーザーを発振させた5月16日には、毎年国際光年の記念行事が行われています。
(第1回国際光年はアインシュタインが誘導放出の基礎になる光電効果について発表した1905年の100年後、2005年)
その後1960年代後半には皮膚科医ゴールドマンによりレーザー光をあざの治療に用いる試みがなされ、レーザーが医療の世界に進出してくることになります。
タイムライン
- 1917年
- アルバート・アインシュタインが、レーザーの基礎となる電磁波の誘導放出現象を予測した。
- 1939年
- バレンティン・ファブリカントが、電磁波の放射を増幅する誘導放出を理論化。
- 1950年
- チャールズ・タウンズ、ニコライ・バソフおよびアレクサンダー・プロクロフが誘導放出に関する量子理論を発展させ、マイクロ波の誘導放射を実験により実証した。彼らはこの画期的な研究により後にノーベル物理学賞を受賞する。
※ 写真は(上)タウンズの実験機、(下)ノーベル賞を受賞した3人(プロクロフとバソフの研究室にて) - 1959年
- コロンビア大学の大学院生、ゴードン・グールドが、光の増幅にも誘導放出が利用できると提唱。彼はコヒーレントな(波長の揃った)光の細いビームを生成できる「光共振器」の概念を示し、それを「放射の誘導放出による光の増幅(LASER)」、つまりレーザーと名付けた。
- 1960年
- セオドア・メイマンが、カリフォルニア州にあるヒューズ研究所で最初のレーザー機器にあたる実用試作品を製造。このレーザーは、媒質(レーザー光を増幅する性質を持った物質)としてルビーを使用し、694.3nmの波長をもつ強力な可視光線ビームを放出した。
ルビーレーザーの最初の用途は軍事においての距離計測であった。
※ 左はメイマンと彼が最初に制作したルビーレーザー
この後引き続いて、様々な媒質を用いたレーザー機器が続々と開発される。同年He-Ne(ヘリウム・ネオン)レーザー、翌年にはガラスレーザーそして翌々年にはYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー、色素レーザー、GaAs(ガリウム・ヒ素)レーザーが発明された。 - 1963年
- AT&Tベル研究所のクマール・パテルが炭酸ガス(CO2)レーザーを開発。CO2レーザーは連続発振ができることに加え、ルビーレーザーよりもはるかに低コストかつ高効率であり、50年以上に渡って最も普及した工業用レーザーとなった。
現在も次々と各種媒体によるレーザー機器が開発されており、医療に応用されるレーザーだけをみても、アルゴン、エルビウムガラス、エルビウムYAG、ホルミウム、エキシマ、ダイオード、アレキサンドライト、CuBrなど様々な媒体から、周波数変換技術なども利用して三十種類以上の波長に及んでいる。