大江橋クリニックで行っている
レーザー機器の一部について紹介するページです
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2007年に大江橋クリニックを開院するにあたって、私たちはどんなレーザーを導入し何をどう治療していくのかについて悩みました。
もちろん機種は多ければ多いほど治療の選択肢は広がります。しかし当時も(今と同じような円安でしたから)アメリカから個人輸入するにしても国内で調達するとしても1台あたり1000万円から3000万円くらいかかるので、小さな個人開業クリニックではそう何台も買えません。
いろいろ悩んだ末、国内では医療用レーザー製造の実績と歴史があり使い勝手の良いNIIC(現在の澁谷工業)から3台、アメリカからは大城クリニック時代に使い慣れていたサイノシュアー社から2台の合わせて5台を購入することにしました。
保険治療には特に拘りませんでしたが、国産のレーザー機器の一部は医療機器としての承認が取れているため、保険でのあざの治療も行うことにしました。
シミやホクロの治療ができることはもちろんですが、これまでどこでも行われたことのない、数種類のレーザーを組み合わせた美肌レーザー治療を大江橋クリニックのレーザー治療の柱とすることに決めました。
開業前に勤務した城北病院(北山武田病院)では血管腫治療用としてキャンデラ社のVビーム(色素レーザー)、脱毛にはジェントルレーズ(ロングパルスアレキサンドライトレーザー)を主に使っていましたし、QスイッチアレキサンドライトレーザーのアレックスやVビームの前身とも言えるSPTL1bなども使用経験がありましたので、キャンデラ社のレーザーも有力な候補に上がっていました。
ただ瞬間的に冷却ガスを照射部位に吹き付ける独特の冷却方式が使いかたを限定してしまっていること(焦点を外した照射がやりにくい)、脱毛ではパルス幅の細かい調整ができない、ハンドピースが日本人の手にはやや大きく照射部位によってはうまくポジションを取ることが難しいなど、使い慣れているためかえって使い勝手の上で少し不満がありました。また私たちの目指す美容レーザーとしての使い方のためにハンドピースに特殊なクーリングアダプターをつけてみたかったのですが、それを事前に試すことができませんでした。それでもある程度納得できる見積もりも出たので、実はかなり悩んで発注直前まで行きました。
ところが発注締切日の翌日、つまり当時の「明日」キャンデラがアメリカで新製品を出すという情報が、その時交渉中だった他の数社の営業から同時に入ってきたのです。実は、キャンデラ社からの購入予定機器は発売から少し時間が経っていたため、新機種に変わるのではないか、どうせ購入するのなら新しいものにしたいと思い、その点を何度も営業さんに確認をしていたのですが、それはないと明確な返事をもらっていました。しかし実際には新しく購入した機種が開業する頃には旧機種となってしまうことがわかったのです。これはちょっといただけません。悪気はなかったのかもしれませんが、言葉は悪いが「騙された」と思いました。
もしこの時サイノシュアーでなくキャンデラにレーザーを注文していたら、今の大江橋マジックやお肌デトックスは生まれていなかったかもしれないし、レーザー照射のメニューや組み合わせは現在と全く異なっていたと思います。
サイノシュアーのレーザーは、大城クリニックでLPIR(LongPulse Infra Red: ロングパルス・アレキサンドライトレーザー)を用いて脱毛を担当するようになるまで扱ったことがありませんでした。実際に使用してみると、冷却を外部機器に任せてしまったため、ファイバーの先のハンドピースは軽くて扱いやすく、照射部から距離を離して(デフォーカス)照射することで照射範囲を広げながらフルエンス(照射エネルギー)を下げることができました。
どれくらい離すと何ジュールくらい皮膚表面でのエネルギーが低下するかを計算し、実際の計測値とのずれを実験で確かめたりして、美容レーザーとして使う方法を学んでいたので、かなり魅力的でしたが、当時の経験としてしばらく連続照射を続けると馬鹿にならないくらい照射エネルギーが低下してくるので、その辺は注意が必要だと思っていました。
大城クリニックを辞めてから約6年間サイノシュアー社のレーザーから離れていたので、その後出た機種については全く知識がありませんでしたが、当時の営業担当だった高瀬さんがとても親身に相談に乗ってくださり、試用するためのデモ機も色々な機種をかなり長期間快く貸していただきました。東京にある日本支社を訪れた時の雰囲気もとても温かいものを感じました。当時試してみたかったレーザートーニングに近い照射法なども何度も練習させてもらいました。この人の薦めるものなら間違いがないのではないか、と信じることができたのが最終的に購入に踏み切った理由です。メンテナンスも非常に有能な技術者に来てもらうことができ、通常5%程度の誤差は許容範囲と言われるところをほとんど上下幅なく精密に照射エネルギーを調整してもらえるので、照射光が想定より強すぎることによる事故などは今に至るまでほとんど経験していません。
外付けの冷風機の強さも簡単に上げ下げして10段階に調整でき、照射間隔が長い時には冷却を弱めて皮膚温が下がり過ぎるのを防いだり、痛い時には少し強く冷却したりが比較的自由にできました。(立ち上げた時使用時間が自動で5分に設定されてしまうので、大江橋クリニックのように1時間の連続使用を行うにはそのたび50回以上▲ボタンを押さなければならず、これがちょっと不便でした。)
脱毛器として使い勝手の良いエリートも捨てがたかったのですが、ヘモグロビンに吸収される波長が欲しくてシナジーマルチプレックスを選択し、それを補う意味でより波長の長いフラクショナルレーザーであるアファームも合わせて買うことにしました。主力機として導入したシナジーマルチプレックスは、ハンドピースを付け替えることなしにキャンデラのVビームと全く同じパルス色素レーザー照射とジェントルYAGとほぼ同じロングパルスYAGレーザー照射ができ、マルチプレックスモードでは両者を連続して同じ患部に照射できました。キャンデラもその後1台の機械から2つの波長を出す新機種を発売しましたが、それに比べても使い勝手が優れていると思いました。
久しぶりに触ってみると、やはりハンドピースが軽くてとても扱いやすく、また外付けではあるものの冷却が連続的な冷風のため、キャンデラ社のレーザー照射の時感じるプシュッと痛冷たい感じより不快感が少ないように思われました。パルス幅の調節範囲も大きく、0.3msecから300msecまで変えられ、ハンドピースも直径3ミリから12ミリまで標準で簡単に付け替えられるので、治療の自由度が非常に大きいと思いました。
シミやホクロについては後に述べるようにNIICのルビーレーザーとCO2レーザーに決めていましたが、シナジーマルチプレックスは色素レーザー(590nm)とYAGレーザー(1064nm)のカップリングであるため、美容系としてもう一つ別の波長のレーザーが欲しいと思いました。そうした場合普通なら脱毛用として両者の間の波長となるアレキサンドライトレーザーかダイオードレーザーを選択するべきだと思いましたが、キャンデラやルミナスなどの他社でなく、買うのならば高瀬さんのサイノシュアーからもう一台撰択しようと思い、脱毛用ではなく全く考え方を変えて、浅めのフラクショナルレーザーであるアファームを選択しました。
実はエリートを選択しなかったのは、脱毛用としてNIICが新規開発した日本製として初となる脱毛専用のロングパルスYAGレーザーを導入することに決めていたからでもあります。メラニンに対する吸収性や国内における経験の多さからはアレキサンドライトレーザーの方が良さそうにも思えましたが、この際YAGレーザーでどこまで日本人の脱毛ができるかやってみたいという思いもありました。他社製の機械はジェルを塗らなければならなかったりハンドピースが扱いづらそうだったりで購入までは考えませんでした。
それまでフラクショナルレーザーに対して懐疑的だったのですが、アファームは皮膚を削らない(ノンアブレーティブな)点と、効果範囲が浅い(300μ程度)点から、従来のフラクセルなどのフラクショナルレーザーと違って肌を傷めない点が気に入りました。
アファームにはオプションとしてIPL(フォトフェイシャルに用いるフラッシュランプ)が付けられましたが、必要性は感じませんでした。営業の高瀬さんも必要ないでしょうという意見でした。(こういうところも好きでした)ハンドピースの先につけるチップは10ミリのみとしました。より深いところまで光が入る14ミリのチップをつけてマルチプレックスモードにすることもでき、実際に他のクリニックはほとんどそうしていたようですが、大江橋ではアファームのメリットは「浅いところにしか光が届かない」ところにあると思っていたので、マルチプレックスにはしませんでした。
マルチプレックスの14ミリチップはその後比較的早く供給停止となり、アファームを使用しているクリニックはほぼ姿を消しました。結果的に10ミリを使い続けた大江橋クリニックは自力でメンテナンスを行なっている大城クリニックと並んでアファームを長い間使用することができました。アファームに関しては以下を参照してください。
美容外科を名乗る以上、シミを取るレーザーやホクロを取るレーザーは必要だと思っていました。(実際に開業してみると、大江橋クリニックを訪れる患者さんには大きなシミをつけたままにしている方は少なく、ホクロも積極的に手術して取ることが多いので、出番が思いの外少ないのは誤算でしたが。)
CO2レーザーに関しては最初からNIIC一択でした。実は前職の城北病院でCO2レーザーを更新することになり、その際に各社のデモ機を使い比べる機会がありました。その際に、ハンドピースが扱いやすく、焦点がシャープで狙ったところにきちっと当たる切れ味の良さが気持ちよくて、ぜひNIIC製にしたかったのですが意見が通らなかったことがありました。
その時に私の意見が通らなかった理由は、(1)他社製に比べて高価であったこと、(2)それまで使用されていた他社の製品とは形状が大きく異なり、使用感がかなり違ったこと、(3)スーパーパルスモードでシャープに削るという使い方をしている医師が思いのほか少なく、ノーマルモードデフォーカスで周辺まで焦がして取るような使い方がなされていて、性能が正当に評価されなかったこと、などでした。
デモ機が引き上げられ、従来と同じメーカーの新機種に置き換わった時は、使い勝手が変わらず安心した医師もいたのでしょうが、せっかくの治療精度を上げる機会が失われたような気がして悲しかったことを覚えています。
色素性疾患の治療に関しては、保険適応も考えるとQスイッチ式アレキサンドライトレーザーかルビーレーザーかということになります。当時は扁平母斑も保険で治療することを考えていたのでルビーレーザーがいいだろうとは思っていました。
NIICは第一候補ではありましたが、競合の他社製に比べて価格(定価?)がかなり高く、本体の大きさや電源の条件などもあって、最初はかなり迷いました。他社製品もさまざまな特徴があり、連射できたりトップハットビームだったり100vで使えたりとそれなりに魅力的でした。
実はルビーレーザーに関しては経験が浅く、機種を決定する上での知識が乏しかったのです。
最初に色素性疾患を治療し始めた時に使った機械はQスイッチ式YAGレーザーでした。城北病院に鈴木先生が関西で初めて導入した機械で、その後和歌山角谷整形外科にも同型機が入ったので、私が出張して治療を行う際に使用していたのはQ-YAGに限られていました。大城クリニックにはもちろんルビーレーザーもありましたが、その当時の私の担当がアレキサンドライトレーザーを使った脱毛と美肌レーザーだったので、自分でルビーレーザーを操作する機会がほとんどありませんでした。京都に戻って再び城北病院でレーザーを担当した時も、備えられていたのはノーマルモードの古いルビーレーザーのみでしたので、色素性疾患の治療にはQ-YAGかQ-アレキサンドライトを主に使い、ルビーレーザーは滅多に使わず使用経験が不足していたのです。
しかし、実はQ-YAGやQ-ALEXでのあざやシミの治療に関してはやや物足りなさも感じていて、機会があれば本格的にQ-RUBYを使用して治療してみたいと思っていたので、導入するならルビーレーザーにするつもりでした。
そこで、まだ工事中で床もはられていない開業前の大江橋クリニックビルの5階の部屋で、営業の川村さんに来てもらっていろいろな質問をぶつけました。すると川村さんは営業と言いながら実はレーザーを実際に開発した技術者でこのレーザーの技術的な面には精通していることがわかりました。それは私にとっては期待以上のものでした。彼は自分の売る機械の利点だけでなく、欠点も特徴もよく把握しており、これなら何があっても安心して相談できると思いました。それで値段交渉もさることながら、メンテナンスを最低でも3年間、きっちりして欲しいとお願いしました。了解が得られ、私たちはその場で購入を決めました。
川村さんと話していて、NIIC社が実は脱毛レーザーを試作していて、うまくいけば市販する予定だということを知りました。私たちは、この会社の作る機械ならば間違い無いと思ったので、まだいくらで売るとも決まっていなかったその機械を是非とも手に入れたいと思いました。
そこで時間を割いて東京の本社を訪れ、そこに置いてある試作機を実際に見せてもらうことにしました。社長さんにもお会いして、とても誠実な会社だと直感し、その場で購入を決めました。
ロングパルスYAGレーザーでしたので、実はサイノシュアー社で買うことにしていたシナジーのYAGモードと波長も出力もかぶっていました。経営的、あるいは運用を重視した判断であれば、別機種にするのが正しかったかもしれません。でも、私たちはこの会社の人たちが一生懸命作った機械を是非買いたいと思ったのでした。
脱毛レーザーを実用的に使うには、冷却方法がカギになります。冷却方法は各社各様の方式で特許を取っているため、単純に真似することができません。NIICのものは水冷式で、摂氏4度に冷却した水を冷却チップの中に循環させて、照射部の周囲を冷やすというものでした。照射部位そのものではなく、その周囲を冷やすということになり照射中心の皮膚温は若干上がりますが、周囲を圧迫することによりYAGの欠点であるヘモグロビンへの吸収を少し抑えられ、また触覚による痛み軽減作用もあって、同じ出力でも他の冷却方式の機種より痛みが少ないと感じました。
脱毛機として国産初めての発売でしたが、この機械にはいろいろ欠点もありました。厚生労働省が美容向けの機械の医療承認を行わない方針だったために(今は脱毛機も承認されるようになりましたが、以前は認められませんでした)、このレーザーは「レーザー手術機」として認可され発売されることになりました。実際には脱毛として使うのですが、その機能はあくまでオプションであり、脱毛用のハンドピースは別売です。しかも、手術機なら麻酔をかけて使うだろうというので冷却機能はつけられませんでした。しかし冷却機能なしの脱毛器は考えられず、またその冷却機能が優れていることが売りなのですから、冷却器を外すことなどできません。
仕方なしにこの機械には後部に大きなスペースが設けられ、そこに冷却ユニットを後付けで入れて接続するようになっていました。するとなんということでしょう。本体そのものは日本製ですから海外のものと違って普通の100vコンセントで動くのですが、別売冷却器のためにもう一つコンセントがいるのです。しかも安全のために同じプラグから蛸足で繋ぐことは推奨されません。1台の機械を動かすのにコンセントが二つ必要になるのです。こうまでして規制を潜り抜けなければならない日本のメーカーが、海外製の美容機器と太刀打ちできないのは当然です。日本のお役人、すごいです。
実際に使用してみると、機械そのものはすぐ立ち上がりますが、水冷式の冷却器が冷却水を摂氏4度に冷却する時間がそこそこかかり、それまではあまり冷たくありませんし、冷えたら今度は冷却部が結露して皮膚が濡れます。室内の空気の水分が凝結したものなので汚くないしそう不快でもありませんが、水滴を拭き取るのが少し手間でした。
また試作機であったためかファイバーが少し短く、ワキ脱毛などには十分なのですが顔や脚などには取り回しが悪く、また接触式なのにヘッドは交換できないので陰部には使いにくいのでした。ファイバーに関しては最大フルエンスで連続照射していたら燃えてしまったことがありました。それをきっかけにして、合成樹脂からガラスファイバーに交換してもらい、使い勝手は良くなりました。樹脂製ファイバーが少し細かったので、ハンドピースを密着させるため無理に曲げる時、折れないかと心配していたからです。フルエンスを上げるとパルス間隔が延び、広範囲を脱毛するには海外製の200v機器より時間がかかりました。しかし、超ロングパルスにすると痛くない照射ができ、いわゆる蓄熱式のような使い方もできましたし、美容にも使えるので、色々な照射法を実験させてもらいました。
実はPC版の古いページには、右のような写真が掲載されています。これがのちに発売された製品版のIS502です。大江橋クリニックに納入されたのはIS501の3台目でしたので、細かい仕様だけでなく液晶画面や本体デザインも若干違っています。(IS501の写真は前の項に掲載しました。)
とてもいい機械ではあったのですが、IS501はその後故障して修理不能となり、新機種導入の際に澁谷工業さんに引き取っていただき引退しました。
すでに使用をやめていますが、備忘として記載しておきます。
株式会社ニーク(当時:現在は澁谷工業)製 LASERY IS501についての情報開示
このレーザーは試作機です。したがってもちろん医療機器承認番号は取得していません。
Nd:YAGレーザーによる脱毛専用機としてドクターズオーダーの形で導入したもので、製品化されていない段階で研究目的の試作機として導入したため全く同じ機種は他には存在しません。(少しずつ違うコンセプトの試作機は他に存在します)のちに製品化されたものとも仕様が異なります。
美容目的での使用も行っています。
製品化されたもの(LASERY IS502)も、脱毛専用機としてではなくレーザー手術機として販売されましたので、何れにしても適応外使用ということになります。
照射方法は大江橋クリニック独自のもので、安全性に関する国外情報等は存在しません。
厚生労働省の指針に従い「なお情報が不足し、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります」と書いておくことにします。
この機種に関しては国内生産品であり、個人輸入等は無関係です。類似製品はありません。
さて上記5機種で出発した大江橋クリニックのレーザー治療でしたが、順調なレーザー治療機とは関係ないところで医療用レーザーの世界には大変化が起こります。キャンデラ社がイスラエルのシネロン社と合併してキャンデラ・シネロンとなる一方で、サイノシュアー社はパロマ社を吸収したと思ったら同じアメリカのホロジック社に買収されてしまいます。ホロジック社はサイノシュアーの技術を女性の体の健康に応用したかったのですが、開発した機器がFDAに認可されないという事態が起こると、この後CD & R社に投げ売りしてしまいました。この過程でサイノシュアー社の機器開発の方向性が変わっていきました。また国内でもNIIC社はその販売部門がM&M社と合併してMMアンドニーク社となり、製造直売から撤退し、製造部門は親会社の渋谷工業に引き継がれることになります。
こうした経済的な変動の中で、大江橋クリニックが最も重視したメンテナンス体制も変化を余儀なくされます。
試作機として生産ラインに乗らなかった脱毛器のIS501はMMアンドニーク社に引き継がれなかったので、メンテナンスは製作者である渋谷工業さんに直接お願いすることになりました。それならば他の2機種も製作者に直接メンテナンスをお願いしたいという気持ちになるのは自然でしょう。
優秀な技術者においでいただくことで、更新時期を迎えていたレーザーは驚くほど長持ちし、今回の更新まで15年間も特に故障することなく使用を続けてくることができました。(NIIC製の3機種勢揃い、奥にはサイノシュアーのレーザーたちが並ぶ)
しかしいかにきちんとメンテしても、レーザー機器はその特性上徐々に劣化し、出力が徐々に低下するとともに光軸のブレが修正できなくなってきました。そこで2022年、コロナ禍で半導体が手に入らない大変な中、渋谷工業さんに無理をお願いして後継機を手配していただくことにしました。
費用も納入時期も特に注文はつけず、いいものができたら持ってきてくださいとお願いし、8月15日に新機種納品とともにこれまで使っていた機器を引き取っていただくことにしました。(15年間お疲れ様、感謝を込めてリボンをつけて見送りました。)
このCO2レーザーは現在製造販売されているものです。皮膚の切開や蒸散に用いることとされておりレーザーメスとして使う分には適応外使用でもありません。
しかし、黒子の蒸散は美容目的なので、適応外使用になります。
承認機器の適応外使用に関してはリスク等を情報提供する事となっているため情報を開示しておきます。
黒子やいぼを「焼く」CO2レーザーは、どのメーカーのものも大差ないようにいわれていますが、大江橋クリニックのレーザーはどの機種も「切れ味の良さ」にこだわりました。
CO2も例外ではなく照射ビームが非常にシャープであるため、取り切れたかどうか判断しやすく、熟練した皮膚科医の目とあいまって、よい結果を得ているものと自負しています。
何度にも分けてとる、と説明する施設もあるようですが、表面だけを削った場合瘢痕化によって次回の照射が困難になるだけでなく、へこんだ傷痕を残しやすくなると考え、当院ではなるべく1回で取り切るように心がけています。
大江橋クリニックでは現在のところ澁谷工業製のMODEL IB103を主に使用しています。国産レーザー治療機器として伝統があり、多くの医療機関で使用されています。ハンドピースの取り回しが軽く、焦点がシャープでいわゆる「切れ味の良い」レーザーだと思っています。
以前使用していたIB101はノーマルモードとQスイッチを切り替えて使用できましたが、MODEL IB103は、Qスイッチルビーレーザー専用機です。最近はノーマルモードを使うことがほとんどなくなったので、更新時に切り替えました。
一定の条件のもとで保険が適用できますが、大江橋クリニックでは照射法や使用目的が異なり自費診療になります。治療実績も長く、安定した効果を出せる優れたレーザーですので、安心して治療をお受けいただけます。
レーザー照射に際しては通常弾くような痛みがあります。表面麻酔や冷却器の使用で、無痛にはなりませんが痛みはかなり減少します。Qスイッチモードで治療する場合衝撃波が生じて皮膚が振動しますので、バチッという感覚は失くす事ができません。
深い部分にあるあざなどを照射した場合、痂皮にならずに色素沈着のみが長期間持続する場合がありますが、これは皮下で組織の回復作業が長引いているためです。ある程度時間が経てば回復します。
シミと名がついていても盛り上がったものなどや非常に色の薄いものは、ルビーレーザーではきれいにとる事ができない場合があります。どのように治療すべきかは診察の上医師が判断します。
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パルス式ダイ(色素)レーザーとロングパルスNd:YAGレーザーが1台の機械に組み込まれた複合レーザーで、主に血管系の治療に用いられますが、設定の工夫により色素系疾患にも効果があります。
それぞれの波長単独でも一定の治療効果を得られますが、2つの波長をほぼ同時に時間差で照射することにより、より深い治療ができるとともに2種のレーザーの効果をお互いに強めあうことができます。(マルチプレックスモード)
色素レーザーを照射して血管内のヘモグロビン(血色素)をメトヘモグロビンに変えると、YAGレーザーの吸収がより高まるので、効率的に血管が変性破壊できるという原理に基づいています。大江橋クリニックではマルチプレックスモードだけではなくPDLレーザーとYAGレーザーを条件を変えて交互に切り替えることによっても効果を上げています。
レーザーエネルギーで皮膚が加熱されるため、適切に冷却しないと痛みを感じますが、通常は専用の冷却機による冷風で皮膚を冷やしながら照射します。ジェル等は一切使いません。稀に一部に紫斑を生じる事がありますが、通常数日で消失します。頸部のほうが顔より敏感です。可視光線の治療を含むため遮光のためのゴーグルを装着します。瞼に直接照射することは危険なので行っていません。
通常は照射直後に一過性に赤みが出る程度なので、そのまま化粧水をつけたりメイクする事ができます。光線アレルギーなどのトラブルは滅多に起こりませんが、毛穴の内部の毛が焼けるため、体質によっては毛嚢炎(ニキビのようなもの)が多発する事があります。その際は皮膚科で適切に治療します。
現在検討中です。しばらくお待ちください。
医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化受託事業者(デロイトトーマツコンサルティングという厚労省の下請業社)からの指摘によれば、「自由診療のうち医薬品医療機器等法の承認又は認証を得た医薬品又は医療機器を用いる検査、手術その他の治療の方法に該当することを確認できない治療方法」で治療を行う場合には、「自由診療にかかる主なリスク、副作用等に関する事項についての情報提供」をWebサイト上で行わなければならないそうです。
また未承認医薬品、医療機器を用いた治療の場合、又は認証を得た医療機器であっても当該効能・効果への承認がない適応外使用の場合は、「未承認医薬品等であること(承認医薬品等であっても適応外使用の場合には適応外使用である旨)」「入手経路等」「国内の承認医薬品等の有無」「諸外国における安全性等の情報」を明示する必要があるとのことです。
大江橋クリニックで行っているレーザ治療は承認外のレーザー機器も使用する独自の方法を用いているので、当然上記の範疇に入ります。もちろん一部は保険診療と同一の方法で行う治療もありますが、治療法については厚生労働省が承認していない方法であることを明示し、リスクについての記述を明示することとしました。
現在治療に使用しているレーザー機器のうち、澁谷工業製の物についてはいずれも医療承認の取れている機器です。対照的にサイノシュアー社のレーザーはいずれもアメリカ合衆国からの個人輸入品であり、医療承認は取っていません。同社および他社製を問わず国内に同等の性能を有する製品は市販されたことがなく、類似の製品も市販されていません。
しかし大江橋クリニックの所有するレーザー機器はいずれもアメリカ国内はもとより中国、韓国を含め全世界で多数の機器が安全に使用されており、事故やリコールなどの報告もなく、治療に安全に使用できることは米国FDAも認めています。
大江橋クリニックでは、これらのレーザー機器を治療に用いる際、厚生労働省が想定しているような健康保険適応の治療を行なっていません。
照射方法については、機器の安全性の範囲内で独自の方法を用いています。いずれの機械も製造販売会社とメンテナンス契約を結び定期および不定期に部品交換や機器の修理等を行なっており、患者に危害が及ぶような異常や故障を起こしたことはありません。
いずれの機器もレーザー光線を外部に射出する機械なので、不適切な照射条件による事故や副作用のリスクがあります。
可視光線〜赤外線レーザーであるため、直接目に入れば失明の危険があり、照射中患者および術者は適切な遮光メガネを着用して治療します。過剰な照射により照射部に熱傷ないし強い疼痛が生じる危険性がありますが、必ず熟練した医師が適切な条件で照射することにしており障害の発生する可能性は非常に低いと思われます。万一障害が生じた場合も、直ちに適切な処置が可能です。
この文章は医業等に係るウェブサイトの調査・監視体制強化事業の担当者の指示により掲載するものです。
シナジー・マルチプレックスは米国Cynosure社の製品ですが、日本法人であるサイノシュアー株式会社を通じて輸入したものを使用しています。国内での承認機器ではありません。1台のレーザー機のボディにパルス色素レーザー(PDL)とロングパルス・Nd:YAGレーザーを組み込み、同時に、あるいは別個に照射できるようにした複合レーザー機です。
色素レーザー部分は、サイノシュアー株式会社の販売するシナジー J(Cynergy J)という皮膚良性血管病変治療用レーザー装置(医療機器承認番号:22800BZX00114000 )と同じ物ですが、これにロングパルス・Nd:YAGレーザーが組み込まれ、同じハンドピースから(ハンドピースを付け替えずに)照射できるようになっています。マルチプレックスモードでは1回のアクションでPDL >> YAGの順に時間差で二種類のレーザーが照射されることにより治療効果を高めています。Cynergy Jの仕様については添付文書があります。
英語の愛称 Vascular Stationでもわかるように、血管腫や静脈瘤といった血管病変を効率的に治療できる機器です。ですから組み込まれた色素レーザーを使用して、保険治療で認められた血管腫治療と全く同じことができますが、マルチプレックスは承認機器ではないので保険治療に用いることができません。治療は全て自費になります。
大江橋クリニックでは、波長を切り替える機能を利用して美肌レーザーコース等にも使用しています。こうした使い方は適応外使用であり、また照射方法は大江橋クリニック独自のものなので、安全性に関する国外情報等は存在しません。厚生労働省の指針に従い「なお情報が不足し、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります」と書いておくことにします。
なお未承認機器の使用に関しては下記のサイト(URI)を情報提供する事と指示があったため、指示通りリンクを設けておきます。(リンク切れ等に関しては当サイトは関知しておりません)
個人輸入において注意すべき医薬品等について
大江橋クリニックでは、不定期にさまざまなレーザー機器を短期間導入したり、治療の順番や組み合わせを変更したりして治療しています。未承認機の場合もあれば医療承認済みの機器もあります。その度ウェブ上で上記のような適応外使用の告知を行うのは不可能なため、必要に応じて術前または術中に患者さんに説明を行なっています。上記のような文章は、特に医療機器に精通した一部の方以外読む必要のないものであると考えますが、厚労省(の下請け業社)の指示がありましたので一例として掲載しておきます。