立ち耳は対耳輪を折るだけでは治らない!
なだらかな曲面を保って曲げて行くことがきれいな対耳輪を作るコツ
糸の力で曲げようとすると失敗する
美しい耳は一部の鋭角に作らなければならないポイントを除き、ほとんどすべてがなだらかな曲線、曲面で構成されています。
例えばこのページのトップに並べた耳の写真は、様々なサイトに紹介されている「きれいな形の耳」です。シャープな線は対耳輪の下脚(第1脚)の部分のみです(耳の各部の名称に衝いては →この図 を参照。)
立ち耳の手術では、対耳輪を鋭角に折ってはいけません。
残念ながら、厚紙を折り曲げる如く二つに折り畳んだような手術を良く見かけます。
インターネットで検索すると出てくる術後写真も、ほとんどが対耳輪を鋭く折り曲げています。またそのように解説しているサイトさえあります。
一旦こうした手術をされてしまうと、柔らかなカーブを取り戻すのはとても大変です。
↓例えばある著名なクリニックではこんな術後写真をのせています
耳の後ろを切って軟骨を3カ所深く切開した上で糸で縫合したそうです。
右の当院の症例(抜糸直前でまだ腫れています)と対耳輪のカーブを比較してみましょう。
耳甲介を深く大きく作る事も大切です
耳介は集音器でもあるので、パラボラのような丸みが理想です
対耳輪を後ろに折ると、その影響で対耳珠の少し上が急カーブになり、ひらがなの「つ」の字が少し潰れて上を向いたような形になります。
(右の説明写真の黄色の→部分が尖ってしまう。)
また耳のてっぺんがやや尖ってしまうこともあります。
強く曲げようとして耳輪が波打ってしまっている手術結果も見かけることがあります。
↓左右とも耳輪が波打っています (右は当院症例)
上で見たのと同じ症例です。
一部を強く曲げたために耳輪が波打っています。
当院の症例の術前術後を見てみましょう。
上と同じ症例ですが、術前より耳輪全体が自然に後ろに倒れた事がわかります。
術前 術後
※ 実際には再手術などの場合、一度で理想のカーブを描くのは難しく、期間を空けて腫れが引いてから微調整しなければならない事もあります。
皮膚を一旦はがして形ができてから被せる
軟骨フレームの上に皮膚を戻して、位置を調整しながら密着させる
軟骨の形を変える事によって、皮膚と軟骨の位置関係がずれます。
一旦はがす事によって、皮膚の張力を自然な方向に誘導することができます。
はがさずに簡単に済まそうとすると、皮膚の弾力が元に戻る力として作用してしまいます。
耳の皮膚は血流がいいので、耳介動脈を切断したりしない限り壊死する恐れは少ないと思います。耳の後面だけを切って、みかんの皮を剥くように前面まで剥がしてしまう事もできます。
耳輪には深い溝があり、その部分はあまり人目に触れないので、溝の部分を切って前面だけを皮弁にする事もできます。
緊張がかかる方向を調節しながら細かく縫合すれば、傷痕が目立つことはほとんどありません。
※ 耳の皮膚が非常に薄い場合、軟骨を止めた糸の結び目が見えることがあるので、目立たないように結び目の位置と深さを調整します。
※ 右図のように、軟骨を曲げると内側に圧縮力、外側には張力がかかって、元に戻ろうとします。
この力を逃して曲がった形を保つように、特に外側の軟骨膜の強い張力を分断するため軟骨膜に細かく切れ目を入れていくと、軟骨はそれ自体の分子の流動性に従って形を変え、曲がったまま安定します。