瞼の皮膚はどれくらい伸びるのか
瞼の皮膚は人体で一番薄い皮膚です。個人差はありますが、手術室のライトの下で助けて見えそうに薄くなっていることもあります。
薄い皮膚は引っ張れば簡単に伸びます。
薄い革手袋が、あるいはおしゃれな革靴が、買ったときは細いのに使って手や足を何度も出し入れしていると、どんどん形が崩れてきた経験はありませんか?
瞼の皮膚の縦径(まつ毛の生え際から眉毛の生え際までを軽く引っ張って測った距離:右の写真参照)は、思春期頃は最大でも25ミリ程度の方がほとんどですが、30代の方では30ミリを超えてくることが多く、高齢者では40ミリを超える事も少なくありません。
数十年の間に、実に60%以上も伸びる事になります。
伸びた皮膚を縮める事は可能か
伸びた皮膚はレーザーなどで加熱してもあまり縮みません。というより、計測してはっきり分かるほど縮む熱エネルギーを皮膚に加えれば、火傷してしまい皮膚は瘢痕化することになります。瘢痕化した皮膚は硬くなり自然さが損なわれてくると思います。
※ サーマクール・アイなどの高周波治療器が引き締めに効果的と言われますが、当院での治療実績がないため判断は控えます。
手術しないで済むほどの効果が出るのであれば素晴らしいことですが、現時点では伸びた分だけ皮膚を切り取る事が最良の解決法ではないかと考えております。
瞼のたるみは皮膚を切り取るのがベスト
どのラインでどう切るかがポイント
眉下切開は、高齢の女性にのみ適応があると考えます
多くの場合化粧をしなければ隠しにくい傷が残ります
インターネットで術後写真を検索してみる事をお勧めします。
多くの眉下切開の症例写真にはっきりとした傷痕が見て取れます。
たとえ非常にきれいに治ったとしても、多少の不自然さは残ります。
※ 傷痕は見えないほどきれいに治るから心配ない、と言われ他院で手術を受けた患者さんから相談を受けることがあります。
眉下のうぶ毛移行部がなくなりクッキリとします
剃りたてのように見えるので、男性の場合はかなり不自然に見えることがあります。
女性であれば許容されるかもしれません。
縦に不自然な線が出ることがあります
<厚い皮膚と薄い皮膚を縫う際の力加減で薄い皮膚が引っ張られて伸び、目を開けた時と閉じた時でシワの出方が変わってしまうのです。br> 縫合する際にある程度調整は可能です。
二重のラインで皮膚を切るのが自然です
自然な二重のラインとは
二重のラインは、眼瞼挙筋腱膜の端が皮膚まで伸び、筋肉が縮むとき皮膚を奥に引き込む事で生まれます。
従って、その位置を見つけ、そこから外れないように切開する事で自然な切開ラインが生まれます。
通常、この生まれつきの二重のラインは、眼輪筋の瞼板前部と眼窩部を分けるように走っていて、その上下で皮膚の厚さがやや異なり、色もよく見ると違っています。細い血管がラインに沿って走っていることもあり、人によっては白っぽい筋になっていたり、そのラインに平行して小さな毛穴が並んでいたりします。
多くの日本人の場合、瞼の中央付近で計ると、睫毛の生え際から7ミリ程度のところにラインがあります。
重瞼ラインを広めにとりたい場合、9ミリ程度まで広めにとることは可能です。
※ 白人など違う人種の場合、より高い位置にある事が多いようですが、数値で示せる程経験がありません。
皮膚を切除する幅はやや控えめにします
とりすぎると修復が大変です
皮膚だけを浅くとる場合、2センチ以上切除しても良い結果が得られることがありますが、通常は1回の切除幅は1センチ程度に止め、とり足りなければ期間を空けて再手術した方が良いように思います。
眉の下の皮膚は通常16〜17ミリ程度残します
眉と眼の間が非常に狭い方もいますが、皮膚は切除しすぎないようにします。
皮膚ではなく、脂肪や眼輪筋の裏側の組織を十分に切除した方が自然な結果が得られます。
瞼板前組織を眼輪筋を含めて切除します
眼輪筋の切除量が瞼の腫れぼったい感じを左右します
睫毛側の皮膚を薄くすっきり仕上げた方がきれいなラインが長続きします。