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柔道耳:症例解説
〜 Cauliflower Ear Deformity 〜

柔道耳症例:症例1、症例2、症例3の術前(解説編集中)

症例4 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約15年前の症例。40代男性。
25年前から放置していたの柔道耳。耳輪が折れてΣ型になり横方向に縮んで細くなってしまった。対耳輪は複雑な形状に変形して耳甲介を塞いでいる。手術に際しては、複雑に凸凹している皮膚を一定の厚さで剥離して皮弁にし平らに伸ばせるかが勝負になる。

バラバラに砕け変形して重なり合っている軟骨を慎重に外し、削って形を整えてから位置を変えて縫合していく。

左は手術中に仮に皮弁を戻してみたところ。幅が少し広がり耳輪の丸みも出てきた。このあともう少し微調整してから切開した皮膚を戻し、形を整えて縫合する。隙間ができないように凹凸に合わせてガーゼを詰め、表裏からキルティングのように要所を留めていく。1週間目に皮弁を固定しているボルスター固定を外すと、皮弁は表皮が壊死して一部びらんしていた(左下)。

軟膏治療等で皮膚のびらんの回復は見込める範囲。耳甲介の窪みと耳輪の丸みがうまく表現できていないが、ご本人もこれくらいならと了承いただける範囲。希望があれば再手術可能であることを伝え、経過を見ることにする。

左術前、中央術後1ヶ月、右は手術をしていない正常側の耳介。
耳の厚さは手術直後の半分くらいに薄くなり、いく分腫れが引いてきたことがわかる。左の術前と比べると改善はしているが、耳甲介の深さや対耳輪の輪郭がはっきりしていない。右の手術していない方の耳の写真と比較すると、まだ耳の厚みは倍くらいあり、今後数ヶ月かけて腫れが引くともう少しシャープに輪郭が出てくるはずだが、1ヶ月目でこれくらい腫れているのは仕方がない。3ヶ月〜半年くらい待って、軟骨の輪郭がはっきり見えてくれば細かい部分を削るなど再手術も可能になる。
実際には以後の通院がなく最終的な結果は不明で終わっってしまった。

症例5 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約14年前の症例。
柔道耳に対し、初診の10年ほど前に大阪大学で耳介形成手術を受けたが、満足な結果にならなかったとのことで受診したとのこと。br< >右の2枚の写真は手術当日のもので、耳輪が波打っていて厚みも不揃いである。おそらく術後の経過で変形が進んだものと思われ、再手術に際しても注意が必要と思われた。

手術中の写真。左:耳輪軟骨が一部欠損し、波打つように変形していることがわかる。
中央:変形を矯正してしっかりとボルスター縫合で固定する。
右:抜糸直後で、上側の不自然な膨らみはだいぶ改善したように見える。

左から初診時、術後2ヶ月半、手術をしていない正常側。
術後2ヶ月半経ってもなかなか腫れが引かず、初診時の写真と比べても軽度の改善にとどまっていることがわかる。耳輪の不自然な段差は改善したものの、正常な右耳と比べると耳全体が腫れて厚みも倍くらいある。舟状窩の凹みが表現されておらず、耳輪が太い。
腫れが引くのを待っているうちに受診が途絶えてしまい、最終的な経過は不明のままとなった。
柔道耳では術後の腫れ(肥厚性瘢痕)が非常に長引くケースが多く、最終結果(2年くらいかかることもある)を追えないで治療終了してしまうこともある。レーザー照射や内服で腫れている期間を短縮できるのだが、当時はそうしたノウハウの蓄積がなく、待っている間に患者さんが息切れしてしまうこともあった。

症例6 手術中の写真は彩度を落とすなど少し編集しています

約8年前の症例。50代男性。
学生時代に柔道耳になったが、結婚することになり改善したくなった。変形が激しく内部構造はさておき耳輪を丸くすることを目指す。軟骨はバラバラになっていることが予想され表面の皮膚もかなり凸凹している。

術前のデザインの最大の問題は、術後に耳輪となる皮膚の内側に来るように切開線を設定すること、2番目の問題は耳輪と対耳輪の軟骨をどこから採取するかである。右の手術中の写真を見ると耳輪軟骨が何枚にも分かれてバラバラになっている。これらの軟骨を一度耳から取り出し、耳の形になるように組んで移植するので、テクニックとしてはあらかじめ材料が確保してある小耳症よりも難易度が高い。

皮弁は厚みが不均一でしっかりボルスター固定しないと浮き上がって血腫になり壊死してしまう。1週間目に外すと表皮壊死になってしまっていたが、この程度であればきちんと治療すれば治ってくれる。右の写真は中央の写真の10日後だが、まだ一部ビランが残りテーピングしてカバーしている。

ちょうど術後1ヶ月目の写真。かなり腫れているが術前と比較するとだいぶ改善している。

術後6ヶ月目の写真。腫れが引いて、瘢痕が縮み皮膚に皺が寄ってきてしまった。修正するなら大掛かりなことをせずシワのよった皮膚をぬい縮めるなどしてより自然にできると提案するが、イヤホンが入るようになり形もある程度改善したのでもう良いということで終了となった。