ほくろはレーザーできれいにとれるのか
ほくろをとりたい。
でも、ちゃんと跡形なくきれいにとれるのか。かえって汚い傷跡にならないか。どれくらい絆創膏を貼っておかないといけないか。
こうした悩みに、今回は詳しくお答えします。
大江橋クリニックのほくろ治療は原則として自費診療です。
治療の際にはレーザー治療費等のほかに診察料・レーザー予約料他が必要となります。ご了承ください。
開業当時2007年頃の症例:左から
(1)鼻のほくろ、他院で切除をすすめられたが傷が残ると言われ断った
(2)深いほくろ2ヶ所のみ切除(傷にテープを貼付)、他はレーザーして7日目
(3)半年後には鼻の傷跡は全くみあたらない(鼻以外のほくろは治療せず)
(4)4年後(全顔美肌レーザー治療を何回かして他のほくろも薄くなっている)
ほくろをとりたい。
でも、ちゃんと跡形なくきれいにとれるのか。かえって汚い傷跡にならないか。どれくらい絆創膏を貼っておかないといけないか。
こうした悩みに、今回は詳しくお答えします。
大江橋クリニックのほくろ治療は原則として自費診療です。
治療の際にはレーザー治療費等のほかに診察料・レーザー予約料他が必要となります。ご了承ください。
いわゆる「ほくろ」の大半は、色素性母斑(色素細胞性母斑、母斑細胞性母斑)と呼ばれるものです。
ほくろの細胞(母斑細胞)は、赤ちゃんのとき(胎生期)に体中の皮膚の浅い所にばらまかれるようにして発生します。母斑細胞は皮膚で角質細胞にメラニン色素を供給するメラニン細胞に似ていますが、通常のメラニン細胞が増えて黒子になるわけではありません。胎生期にさまざまな細胞に分化する幹細胞(もとになる細胞)から神経を取り巻くシュワン細胞や皮膚に定着するメラニン細胞が分かれていくとき、どちらにもなれなかった細胞が母斑細胞です。
通常は表皮と真皮の境目の浅いところに孤立あるいは散在して全身に分布しています。大きな集団として生まれた時から黒い領域を形成すると「先天性色素性母斑」いわゆる黒あざとして目に触れますが、小さなものは肉眼では見えないものの身体中の表面に「ホクロの種」として存在するわけです。
※ 母斑細胞はリンパ節や胸腺などにも分布することがあります。真皮内母斑細胞と同じものなのか、皮膚から移動したのかなど細かいことはよくわかっていません。
その真皮母斑細胞が、成長の過程で何らかのシグナルを受けて分裂して増え、眼に見える大きさになったものがほくろです。多くの母斑細胞はメラニン細胞のように樹状突起を多く持たない丸い細胞ですが、成長につれ姿を変えて徐々に皮膚の深いところに移動していきます。表面に限局して浅く広がったものを「単純黒子(単純黒子)」と呼ぶことがありますが、より深く大きく成長して「色素細胞性母斑」になる前段階と考えられています。
母斑細胞の一部、特に深いところに存在する細胞にはメラニン顆粒があまり含まれていないことがあり、リンパ球様とか神経様母斑細胞などとタイプ分けされることがあります。こうした細胞も条件によっては分裂して盛んにメラニン顆粒を作り黒くなってくることがあります。ホクロを切除した後に取り残した母斑細胞が再発性ほくろとして最初より黒くなって出現し、悪性黒色腫と間違われることもあります。また、深いところに色がない場合には、メラニン色素をターゲットとしたルビーレーザーやYAGレーザーなどではほくろは取りきれないことになりますので、治療法には注意が必要です。
ほくろは発生した部位によって成長のしやすさが違い、特に眼の周り、鼻の周り、口の周りにできたものは、周囲の血管網から動脈を誘導してその周りに丸く盛り上がって大きくなることが多いので、ほくろを取りたいという悩みもこの部位に集中する傾向があります。大きなほくろはこの様に中心に血管を取り込んでいるため、深く切り込んでいくと出血します。顔面では意外に激しく出血することもあるので、止血の準備が必要です。
子供の頃から顔面にある丸く盛り上がったほくろなどは、中心部が真皮下層まで深く侵入していることがあり、ピラミッドを逆さに埋めた様なものと患者さんには説明します。また一部には中心部が骨化して固い腫瘤となったものもあり、Nanta母斑(骨性母斑)と呼ばれます。この様なものはレーザーで削り取ることが難しく、手術による方が早くきれいになります。
開業当時2007年頃の症例:左から
(1)あごのほくろ、硬く盛り上がり毛穴も拡大している
(2)くりぬき切除後、縦に縫合(3)抜糸直後(4)3ヶ月後(まだ傷跡はやや目立つ)
術中所見 左から(1)くり抜くと4ヶ所から強い出血が見られた
(2)ようやく出血が止まり縫合できる状態になった
しかし他にも皮膚にできるできものはたくさんあり、厳密にはイボであったり血管腫であったり、また稀には皮膚がんの一種であったりすることもあるので、まずは熟練した皮膚科医にきちんと診断してもらうことが重要です。(上記は線維腫の例)
肉眼的に診断がつくことが多いですが、紛らわしいものや悪性の可能性があるものは、切り取って調べるのが原則であり最も確実です。
安易にレーザーや電気メスなどで焼いてしまうと、診断がつかないばかりでなく、将来重大な結果を招く場合があります。
皮膚がんをほくろの再発と思い、何回もレーザーで焼いていたために治療の機会を失った症例を、学会発表などでたびたび目にすることがあります。皮膚科の経験がない美容外科医には判断がつかないこともあるので、まずは正確な診断を受けてください。
ほくろの細胞は、皮膚の表面に薄く広がっているのではなく、たいていの場合、割合深いところまで存在しています。
しかも、深いところにある細胞はメラニン色素を多く持っていないため、黒くないことがあります。
ほくろをQスイッチルビーレーザーなど黒い色(メラニン色素)に反応するレーザーで取る施設がありますが、多くの場合表面の細胞を飛ばすだけで、深いところの細胞が残るため、比較的早期に再発し、また黒い点が出てきます。
(非常に強い出力で周囲の皮膚ごと吹き飛ばしてしまうような照射法があることはあります。またCO2の後にQルビーを重ねることによって、残ったすすを焼いたり再発を少なくする方法もありますが、おそらくQルビーを使うほとんどの施設は、こうした理論に基づいた治療ではなく、黒い色を飛ばすだけの単純な治療を行っていると思います)
このような場合、再発したほくろは最初にあったものより黒くなることがあり、悪性腫瘍と紛らわしいこともあるので注意が必要です。
「軽く焼いておきましたから、取れなかったらまたきて下さい」とか
「深いので今日は半分だけ取りました」などといって、意図的に取り残すクリニックがあります。
おそらく、思ったより深くまでほくろの細胞があるため、深く大きな穴をあけてまでとりきることにためらいを覚え、(深い傷をきれいに治す技術も見通しもないため)途中で治療を放棄してしまうのだと思います。
中途半端に治療すると、残ったほくろの周囲が瘢痕化して、かえって次回の治療がやりにくくなるだけでなく、万一悪性のものであった場合、刺激して増殖を促してしまう場合もあります。ほくろは、取るなら一度で取りきるのが正しい治療法です。
ほくろをレーザーでとるには、通常、CO2レーザー(炭酸ガスレーザー)を使います。
炭酸ガスレーザーは、しみを取るルビーレーザーやアレキサンドライトレーザーなどと違って、メラニン色素の黒い色にだけに反応するといった選択性を持ちません。水に吸収されて熱を発し、細胞を蒸発させてしまう(蒸散といいます)電気メスのようなレーザーです。
それは、上でも申し上げた通り、ほくろの細胞にも色のないものがあり、色だけに反応するレーザーでは結局取り残してしまうからです。
CO2レーザーも1963年以来様々な分野で使われた非常に有用なレーザーです。
連続発振ができビームを細く絞って出血の少ない切開に用いるなど、形成外科分野ではレーザーメスとして使用されることが多いのですが、大江橋クリニックではウルトラパルスモードを主に使いイボや黒子の蒸散に用いています。
ピークパワーの高いウルトラパルスをさらに0.1秒ごとに断続的に用いて、直径0.1ミリ程度に絞った細いビームで点状に皮膚をけずりとっていく使い方をしています。
CO2レーザーは構造が比較的シンプルなため、小型で安い機種が数多く製造されており、クリニックによって使用機種は様々です。
大江橋クリニックでは、ニーク(NIIC)社製のものを使用しています。ニークの炭酸ガスレーザーの特徴は、なんといっても切れ味がシャープなことです。
他社製品の中には、焼け味が甘く周辺がぼけたように滲む機種もあり、それはそれで脂漏性角化症などを弱く焼いてはがすときなどには効果的なのですが、切れ味が悪いことはレーザーメスを使う際に医師の神経を疲れさせます。
また、ハンドピースの取り回しが軽く、思い通りに動いてくれるので、微細なコントロールを要する治療の際には特に役立ちます。
このレーザーとルーペを使って、ほくろは一度できれいにとりきることを目指しています。
2022年に新しいものに更新しました。旧機種とはほとんど性能は違いませんが、より細かな調整ができるようになりました。旧機種はガイドビームと実際に照射される赤外線の当たる位置が0.2ミリほどずれ、スポットも完全な点状ではなくなっていました。もちろん十分使用には耐えますが、非常に正確な治療を行いたいとき頭の中でズレを計算に入れる必要があり疲れるのが更新した理由です。手元に置いておく選択肢もありましたが、製造元にお返しすることにしました。長い間お疲れ様でした。
新機種は本当に優秀です。思ったところに正確に0.1ミリの誤差なくスポットを合わせてくれます。これからどんどん活躍してもらいたいと思っています。
炭酸ガスレーザーは、別名レーザーメスともいいます。細いビームで細胞を蒸散させ、まるで皮膚を切るようにほくろを切り取ってしまえます。小さいほくろなら、ほくろ全体を焼いて蒸発させてしまうこともできます。
ということは?
もうお分かりのように、レーザーといっても、電気メスや刃物のメスと同じようにほくろを切り取り、焼いてしまうものなのですから、魔法のように傷を残さずほくろを消すことはできません。
むしろ、焼いて取る以上、とった後の傷はやけどの傷と同じです。熟練した医師が上手に取れば、焼けた部分は非常に薄く(0.2ミリ程度の厚さ)、切り傷と同じ程度にはきれいに早くなおりますが、基本的には小さいけれどもやけどの傷跡が残ると考えて下さい。
以上のような観点から、大江橋クリニックでは、ほくろの治療は原則的には手術による切り取りが良いと考えています。ただし、直径3ミリ程度以下のもので、傷跡がきれいになおりやすい場所にある場合は、CO2レーザーでの治療をお勧めすることがあります。
顔にあり、形がはっきりした点状の黒いほくろで、盛り上がっていないものが、レーザーの適応になります。もちろん、多少条件に外れるものであっても、ご本人の希望やその他の条件により、手術ではなくレーザーを選ぶことはあります。
平らな大きな黒子の様な黒あざです。(と言うより、ほくろは色素性母斑の小さなものです。)レーザー治療も不可能ではありませんが、非常に多くの回数がかかることが多く、多少薄くはなっても完全には消えず不完全な結果に終わることが多いので、現在のところレーザー治療の良い適応にはなりません。
十分な説明を受けずに治療を繰り返した結果、傷痕とアザが混じり合って却って不自然な見た目になることもあります。切除やドライアイス治療、いくつかの種類のレーザーを組み合わせて治療します。手術がもっとも確実ですが、ある程度の傷が残ってしまいます。
切除すると皮膚移植が必要になるような巨大なものに関しては、従来ストリッピング(皮むき)と呼ばれる手術が主体でしたが、傷痕が汚く残ることがあり、皮膚を削ってから培養した自分の表皮細胞シートを移植することも試みられています。最近では一旦切除した皮膚に高圧をかけて黒い母斑細胞を殺し、元に戻してからその上に正常な表皮細胞を移植する方法などが開発されて効果を挙げています。(現在の京都大学形成外科・森本教授が中心になって開発した方法です。)
小さく丸いものであれば、組織生検用パンチを用いてくりぬく方法があります。下図のようなくり抜き用のパンチを、大江橋クリニックでは直径1ミリから0.5ミリ刻みで8ミリまで用意してありますので、ほくろの大きさに応じて適切な直径の器具を選んで手術することができます。
もちろん、くり抜いた後は縫合して傷を塞ぎます。
くり抜き法を説明するサイトの中には、くり抜いた後縫合せず、丸い穴が自然に塞がるのを待つ、という方法を推奨しているものがあります。しかし、この方法ですと穴が小さくなって傷が塞がるまでに非常に長期間を要しますし、傷跡もくり抜き穴より一回り小さくなる程度で、それ以上小さくはなりません。浸出液が多く傷の手当も煩雑です。
おそらくは、縫合しない方がまし、というのは適切に縫合する技術のない皮膚科医の考え方だと思いますが、大江橋クリニックでは、縫合できない特別の事情がある場合を除き細いナイロン糸で縫合します。
丸くないほくろは、生まれつきある黒アザの場合もありますが、大きさや濃淡、形などが変わってきた場合は要注意です。皮膚科の常識として、直径7ミリを超える場合は一応悪性のものを念頭に置いて慎重に対処するべきとされています。
このような場合、レーザーではとれないからと、ほかの美容外科から紹介されて当クリニックで治療される患者さんもいらっしゃいます。(紹介状を持参される場合もあり、そこは良心的な治療をされている美容外科であると思います。)
丸くない場合は、メスで切り取ることになりますが、大江橋クリニックではほとんどの場合、ほくろの形に合わせてそのまま全体を切り取ります。
通常のほくろと思われれば、当クリニックでは上記のように形なりに切り取りますので、よく他院で説明されるように木の葉型に(ほくろの両側に正常組織を多くつけて)切り取ることはあまりありません。
スピンドル切除の場合は、通常できものの直径の3倍程度の長さの直線上の傷が残ります。両側にドッグイヤー(dog ear)といわれる皮膚の突起を残したくないために、できるだけ鋭角に切り取ろうとするためにこうなってしまうのですが、皮膚の伸展性には個人差が大きく、画一的に決めることはふさわしくありませんし、何より正常な皮膚を切り取って傷を残すことにはためらいがあってしかるべきです。
いくら縫合技術が優れていても、正常な皮膚に長い傷をつけることは、形成外科医としてできるだけ避けるべきだと思います。
切り取った後には、ほくろの形通りの穴があいています。丸い傷を縫い縮める場合、これを縦方向に縫おうとすれば、横方向に、前述のドッグイヤー(皮膚の盛り上がり)が生じます。それを切り取ろうとすると、平らに近づけるために傷の長さは伸び、スピンドル切除に限りなく近づきます。
この場合、全方向に対してまんべんなく縫い縮めるために、大江橋クリニックではいわゆる巾着縫合という方法を用いています。
巾着縫合(タバコ縫合)と呼ばれる縫合法自体は、古くから外科で行われてきた方法ですが、これを真皮縫合のレベルで行うのが当クリニックの手術法の特徴です。
通常、皮膚表面から約1ミリのレベルで丸い傷の内部に数針(大きさによりますが4〜8針程度)透明なナイロン糸をかけ、巾着袋の口を締めるように糸を引き絞ると、ほとんどの場合もとあったほくろの数分の1程度の小さな傷におさまります。どの程度小さくなるかは、患者さんの皮膚の硬さに非常に影響を受けます。
当初は、この真皮縫合のみで手術を終えていましたが、京都桂病院時代に寺島先生のアドバイスにより、この上からさらに(顔の場合)7-0ナイロン程度の細い糸で皮膚縫合を加えて傷を閉鎖することにしました。
これにより、傷の治りを早めながら、傷自体の大きさもさらにちいさく治めることができるようになりました。
まぶたや唇など、特別な部位にあるほくろの場合は、上に述べた方法とは違う術式をとる場合があります。
また、2つ以上のほくろが近接して並んでいたり、巾着縫合での傷の閉鎖が難しい場合などは、その都度適切な皮弁を選択して作図したり、場合によっては2期的な傷跡直しの手術を念頭に置いて1回目の手術を終えることもあります。
以下の内容は製作中です