大江橋クリニックで行う下眼瞼のたるみ取り手術
しわ取り術をきちんと行うのがベストです
プチ整形などといってお手軽な切らない治療が好まれるようになったことは、美容手術の門戸を広げたという点では評価されるべきでしょう。ただし、お手軽な治療は、期待ほどの効果がない、ということも医師はきっちりと説明すべきでしょう。
脂肪を抜いたり、くぼみにしき込んだりしてできることは限られていますし、その効果もたいていは1年以内に失われてしまう一時的なものです。確かにダウンタイム(人前に出づらい期間)は短くてすむかもしれませんが、そうした簡便な方法では改善できない症状もたくさんあります。
ダウンタイムは長めに見ておきましょう
大江橋クリニックでは、下瞼の手術をするときは、まつげの生え際から2〜3ミリのラインを目尻の外側まで長く切開します。ちなみにこの切開線は、(切った以上は消えてなくなることはありませんが)通常他人がみても気づかれないくらいにきれいになおる場合がほとんどです。
たるみが気になるくらいの症状であれば、皮膚の緊張も弱く、ある程度皮膚を切除しても傷が開くことはまずありません。
通常は眼窩下溝のラインまで皮膚を薄く剥離します
皮弁法と言って、皮膚と筋肉を別々に処理する方法をとっています。
筋皮弁法といって、皮膚とその下に付着している眼輪筋を一緒に切開してしまう手術法があり簡単ですが、いろいろと問題があります。最大の問題点は、たるみを取るために筋肉と皮膚を同時に切除するという考え方に立脚している点です。たるみを取るためにすべきことは、筋肉の引き締めであって切除ではありませんし、皮膚も引っ張って切り取りすぎると外反(あかんベエ状態)を来しやすくなります。
下眼瞼の薄い皮膚を筋肉から綺麗に剥がすのは技術と根気が入ります。何よりも皮下組織の中にあるたくさんの細い血管を切ることになるので出血が多く、止血に時間がかかります。それでも細かいものは止血しきれず、止血剤が効いている間は止まっているのですが手術が終了した後に再出血して皮下出血が起こってしまうことが非常にしばしば起こります。と言うより必発です。
したがって術後はボクシングの試合後のように目の周りが赤あざ青あざになって腫れ、落ち着くのに2週間以上かかると思ってください。
どうして皮膚を剥がすのか
皮膚と筋肉、眼窩隔膜、脂肪を別々に扱って、それぞれを収まりの良い場所に戻すのが、将来の変形を防ぎ効果を長持ちさせる方法だと思っているからです。内視鏡手術が流行っているのに開腹手術をするようなものでやや時代遅れかもしれませんが、他の方法にない効果が得られると思っています。
眼輪筋のような表情筋は皮膚と分かち難くくっ付いているので、筋肉だけを引き締めたり、皮膚と筋肉の位置関係を変えたりするのが難しいのですが、あえてそれをすることによって筋肉をきちんと引き締めながら皮膚を引っ張りすぎないで適正な位置に戻すことができ、また皮膚のコラーゲンを増やして弛みにくい肌を作ることが可能になると思っています。
皮膚を剥離したのち、筋肉も眼窩隔膜から剥離します。眼窩隔膜とその中の眼窩脂肪は可能であれば手をつけずにおきます。脂肪がヘルニア状態でどうしても切り取らなければ収まらない場合は最小限で切除します。眼窩隔膜は菲薄化していたり破れていたりして縫って修復しなければならないこともありますが、縫合した傷が皮膚の上から触れるほど硬くなってしまうこともあるので、できる限りそっと平らに残し、凸凹しないようにしておきます。
眼輪筋は目尻の外側でタックを取ります
瞼板前部の眼輪筋はできるだけ瞼板についたまま残し、眼窩部との境目から剥離したいのですが、大きくずり落ちてしまっていることもあります。筋肉全体をできるだけフリーにして耳に近い側に引っ張り、頬がピンと張るように外側でタックを取ります。通常1センチくらいつまめることが多いようです。ヒダは奥の方に落とし込むようにしてタックを糸で縫い縮めます。
この時筋肉が凸凹しないように筋肉を一部切除してしまう医師もいるようですが、眼輪筋の神経支配は耳側から神経が来ているので、不用意に切ってしまうと眼輪筋を麻痺させることになります。切らずにタックして、内側に戻らないように眼窩の骨膜に一部を縫い付けます。
この操作で眼輪筋は瞼板の上に乗り上げます。適当な位置に糸をかけて瞼板と眼輪筋を縫合します。この時にどの程度の量をまとめて瞼板に乗せるかで涙袋の大きさが決まります。
筋肉の処理が終われば皮膚を戻し、引っ張りすぎないように外上方に寄せて切除量を決め、余った皮膚を切り取ります。ほとんどの場合数ミリにとどまり、皮膚のたるみを切除すると言った感じはありません。皮膚を取らずに筋肉を引き締める手術です。
あとは眼輪筋と皮膚がピッタリ密着するようにテーピングを厳重にします。テーピングが甘かったりズレると、筋肉と皮膚の位置がずれて皮下出血が多くなり、回復に時間がかかります。テーピングはもう大丈夫と思えるまで2週間から場合により3ヶ月くらい行います。
きちんと修復したまぶたは長持ちします
まぶたは顔の中でも特にデリケートな部分です。安いからと広告につられたり、経験の少ない医師の実験台にされたりすることのないよう、納得のできる説明をしてくれる医師を選んで手術を受けましょう。
大江橋クリニックの下眼瞼手術は、他の美容外科で行っているものに比べ侵襲が大きく術後の回復に時間がかかると思います。それでもあえて行うのは、それぞれのパーツを分けてきちんと処理することが構造と機能を維持する上で最も大切なことなのではないかと思うからです。
自分ではこの術式をTotal Lower Eyelid Plasty (TLEP)などと名付けていますが、どこにも発表していませんし多分オリジナルというより基本に忠実なだけだろうと思い、宣伝はしていません。
こんな名前にしたのは、ドイツ留学時代鼻の形成を教えていただいたDr. Gubischが、鼻の軟骨を一つ一つバラして良い形に矯正してから組み立てる、先生独特の手術をTotal Rhino-Plasty( TRP)と呼んでおり、毎日の予定表にTRP,TRPという文字が並んでいたのにあやかったものです。
大江橋クリニックの手術予定表にTLEPの文字が並ぶといいなあ、と思ってつけましたが、実際にはこの手術に持ち込む前に、多くの患者さんはレーザーや上眼瞼の手術でかなり改善してしまい、最終手段である手術に頼らなければならない重症の患者さんは数えるほどです。
それも大江橋クリニックの技術の成果だとすれば、手術が少ないのはいいことなのかもしれません。