保険診療は「制限」診療である事をご理解ください
保険診療は、厚生労働省が認めた範囲に限って適応される医療の「現物支給」です。
少しでもよりよい治療を、と望んでも国が認めない限り「支給された医療」の枠から外に出る事はできません。
それは、健康を保つ上での「最低限度の」治療であり、決して世界標準ではありません。
ではもっといい治療を受ける事はできないのでしょうか?
そんなことはありません。保険を使わなければ、誰でも最先端の治療を好きなだけ受けることができます。
それが「自由診療」です。あなたが医療費を自分で全額負担することにすれば、煩わしい制限は一切なくなります。
健康保険の制約
最近特に、医療費削減の名目で保険診療に制限が多くなってきました。
使える薬の種類や処方期間の制限だけでなく、必要と考えて行なった検査・処置なども、不必要であるとして保険者(支払い側)から支払いを拒否される事もあります。支払いを拒否された場合、それは当クリニックの損失となるだけでなく、支払い側にとっては「不正請求」と見なされ、今後の保険診療に支障を来します。
例えば、同じ病気について同時期に2つ以上の医療機関を受診した場合、その一方に対してしか医療費が支払われない場合があります。
この場合、あらかじめ転医のための紹介状等をお持ちいただかないと、保険証があっても保険診療が行なえません。「一度しかかかっていない」とおっしゃる方がいますが、その場合「前医での治療は継続中であり終了していない」と見なされます。
ご存じない方もありますが、セカンドオピニオン(別の医者の意見を聞く場合)は前医からの紹介状(治療データを含む)を御持ちいただいた場合でも原則として自費になります。2カ所で診察を受ける場合、2カ所目は自費、とご理解下さい。(当院では基本的にセカンドオピニオンをお受けしていません。)
同じ薬を数ヶ月以上にわたり延々と処方することは非常に難しくなりました。
再発予防は「保険治療」の目的ではないため、投薬は短期にとどめ、治癒しないのならば治療法を変更するか中止すべきだと、保険者(支払側)は考えます。再発した場合は治療再開できますが、治らないもの(傷痕や色素沈着などの病気の後遺症ともいえるもの)は原則的に保険では治療できません。
患者さんにはご不便をおかけする事になりますが、保険制度に伴う制約という事で、ご了承をお願いいたします。
また今後は、実際に行った治療の内容や費用についても、保険者側が後日、適応除外として変更・減額してくる可能性があります。こうした場合、保険適応を取り下げ、健康保険から自費診療への変更をお願いすることもあり得ますので、ご協力をお願いいたします。
診療報酬はマスコミで喧伝しているように全額が医師の収入ではありません。そのほとんどは薬代や材料費として医療関連の会社への支払いに充てられ、医療機関の実際の収益は支払われた医療費の数%にすぎません。
従って、保険者側の支払い拒否は、たとえ少数であっても医療機関の存続を危うくするものです。保険診療には様々な制約があり、その制約の中で患者さんの利益が最大になるように、各医療機関は努力を続けています。
健康保険の原則
健康保険の原則は、全国どこでも同じ値段で同じ治療が受けられる事です。
ですから保険診療には「最先端の治療」や「特殊な治療」は含めてはいけない事になっています。
ここから出てくる解釈として、「どこの医療機関にかかっても保険診療である限り治療結果は同じであるべき」と考えられるので、保険診療ではたとえば遠方の名医をわざわざ受診する「必要は認められず」、他の医療機関にかかるよりも(薬の種類が多い、受診回数が多いなど)お金がかかる治療を受けることは「濃厚診療」として禁止されます。
言い換えるならば、他人よりよい治療を受けたい、という願望は「保険診療では許されない」のです。
以下に、患者さんが知っておくべき保険診療の原則をいくつか示します。
- 保険証の提示がなければ、保険診療を行なってはならない
(後日お持ちになった場合の払い戻しは医療機関独自のサービスです)
- 同じ病気に対して、保険と保険外の治療を併用してはならない(混合診療の禁止:特例あり)
(保険外を併用する場合は全額自費になります)
- 同じ病気に対して、同時に2カ所の保険医療機関を受診してはならない
(どちらか1カ所の診療費は自費になることがあります)
※ セカンドオピニオンは原則的に自費となります
- 病名に対して認められた薬だけしか処方してはならない。特殊な治療法は行なってはならない。
- 直接診察をしないで薬を処方したり診断書を書いたりしてはならない
(窓口でお薬のみを受け取ることは法律違反です)