治療法解説 6
大江橋クリニックでは、現在のところ新規のレーザー治療の受付が困難になっており、新患のレーザー治療は、原則として自費治療の方のみに限らせていただ行くことになりました。ご了承ください。
色素レーザーを用いる治療
皮膚レーザー照射療法(色素レーザー照射療法)は、薬事法に適合したレーザー機器を使用して規定通りに治療を行なった場合に健康保険が適用されます。
当院では以前は規則を遵守して保険治療を行なっておりましたが、保険治療の限界を感じ、この項目の治療は全面的に自費治療に移行いたしました。
しかし、これは治療費が高額になる事を意味しません。保険診療の制限をなくし、自由に機器を選択し最適な治療をリーズナブルな金額で行なう事を心がけておりますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
参考: 保険治療費のめやす (色素レーザー)
面積 | 保険治療費 | 自己負担3割 |
---|---|---|
〜10cm2 | 21,700円 | 6,510円 |
〜20cm2 | 26,700円 | 8,010円 |
〜40cm2 | 36,700円 | 11,010円 |
〜70cm2 | 51,700円 | 15,510円 |
〜100cm2 | 66,700円 | 20,010円 |
〜150cm2 | 91,700円 | 27,510円 |
〜180cm2 | 106,700円 | 32,010円 |
180cm2〜 | 106,700円 | 32,010円 |
3歳未満は20,000円(3割負担 6,000円)を加算する
単純性血管腫(赤あざ)
生まれつきある平らな赤あざ。健康保険適応で、面積により治療費が上記のように決まっています。
数回の治療でかなり薄くなります。しかしあざの性質上、完全に消えるとは限りません。
大人になると部分的に盛り上がってくることがあり、お子さんのうちに治療した方が成績はよいようです。
当院ではシナジー(健康保険適用なし:自費治療になります)を用いて治療します。
シナジーの特徴は、既存の健康保険適応機種(Vスター、Vビーム)等と同等の波長の色素レーザーと同時に、波長1064ナノメートルのYAGレーザーを同じ患部に照射できる事です。
マルチプレックスモードでは、同じハンドピースから色素レーザーに続いてYAGレーザーが一定の時間後に連続して照射されます。
この「色素レーザーパルス>ディレイタイム>YAGレーザーパルス」をそれぞれ調整する事により、単に2種類のレーザーを照射した場合よりも治療効果を上げることができます。
もちろんマルチプレックスモードの単回照射だけでなく、症状にあわせパルス径や照射条件を変えて同じ場所に数回の照射を繰り返したり、色素沈着予防のためのイオン導入と組み合わせるなど、自費ならではの自由な治療法を選択できます。

シナジー治療費のめやす
面積 | 治療費概算(税別) |
---|---|
〜10cm2程度 | 5,000円 |
〜25cm2 | 10,000円 |
〜50cm2 | 15,000円 |
〜150cm2 | 20,000円 |
〜300cm2 | 35,000円 |
300cm2〜 | 50,000円 |
シナジー治療費は診察の上決定します
実際の治療に当たっては、細かい面積計算は行なわず、顔面半分程度20,000円、フルフェイス35,000円などのように概算で行ないます。小部分のテスト照射は5,000円程度です。
ただし自費診療のため診察料(美容指導料)2,000円(税抜)が別途かかります。
苺状血管腫(盛り上がった赤あざ)
生まれて数週間目ぐらいから急速に盛り上がってくる赤あざです。いろいろな治療法がありますが、最近ではレーザー治療が主流です。
治療開始は早ければ早いほどよく、見つけ次第、できれば盛り上がる前に治療するのが原則です。
この原則は、今から15年ほど前、当院院長が冨士森形成外科勤務時代に学会発表していますが、未だに放置をすすめる小児科医・産科医もいます。
治療費のめやす
上記のシナジー治療費を参照してください。小部分のテスト照射は5,000円程度です。
ただし自費診療のため診察料(美容指導料)2,100円が別途かかります。
毛細血管拡張(赤ら顔など)
顔面や体などにある毛細血管は通常目に見えませんが、拡張して皮膚全体が赤みを帯びたり、あるいは細い糸くずが絡まり合ったように目に見える状態になることがあります。
保険適応でレーザー治療できますが、当院では行なっていません。紫斑(皮下出血)の起こるレベルで強く照射すると、数回の治療でかなり改善します。ただし、症状により再発することもあり、また紫斑が生じると日常生活に支障があるため、美容的な目的で照射する場合は通常長期の加療が必要となります。
治療費は上記シナジーの治療に準じます。
赤面症にはレーザー治療はお勧めしません
毛細血管拡張に良く似た症状に、しゅさ(いわゆる赤ら顔)や赤面症(時間や環境によって赤みが短時間に出たり消えたりします)などがあり、これらはレーザー治療の前に別の治療法を行なうべきです。
しゅさ(いわゆる赤ら顔)は内服治療でかなりの程度改善します。赤面症は血管の拡張収縮が動的であり、レーザー治療はあまり効果がなく、むしろ心療内科などで心理治療を行なうべきです。
静脈瘤
青いこぶが下肢の皮下にたくさんできる重症のものは入院の上ストリッピング手術が必要となりますので、当院では原則として行っておりません。
軽症のものであれば、局所麻酔手術で静脈の部分切除を行なう事もできます。しかし現在では血管内レーザーの技術が普及してきたため、注射で行なう硬化療法との組み合わせが効果的です。この方法は血管に精通した血管外科の医師が行なうべきであり、当院では熟練した専門医をご紹介しています。
細い静脈が皮膚表面に赤く浮いて見えるもの(直径1ミリ以下の表在性血管)はシナジーのマルチプレックスモードが最適です。ただし、静脈を確実に閉塞させるには強い出力が必要となり、やや痛みの強い治療となります。
静脈瘤のレーザー治療費
部位や面積、血管の深さなどで細かく設定を変える必要があり、実際に症状を拝見してからの相談となります。
通常1〜数万円程度の治療になります。
Qスイッチ付きレーザーを用いる治療
皮膚レーザー照射療法(Qスイッチ付レーザー照射療法)は、薬事法に適合したレーザー機器を使用して規定通りに治療を行なった場合に健康保険が適用されます。
当院ではQスイッチ付ルビーレーザーである → lB101(承認番号21000BZZ00628000)を用いて治療を行なっています。
しかし保険診療の制限(治療間隔および回数の制限)や、自由に機器を選択できないなどの問題から、自費治療を選択してリーズナブルな金額で行なう事もできます。ご相談ください。
参考: 保険治療費のめやす (Qスイッチ付レーザー)
面積 | 保険治療費 | 自己負担3割 |
---|---|---|
〜4cm2 | 20,000円 | 6,000円 |
〜16cm2 | 23,700円 | 7,110円 |
〜64cm2 | 29,000円 | 8,700円 |
64cm2〜 | 39,500円 | 11,850円 |
3歳未満は20,000円(3割負担 6,000円)を加算する
保険治療における診療制限
レーザー治療は当初「手術」の項目で保険診療に取り入れられました。
その後、各地の医療機関にレーザー機器が普及した結果、レーザー治療は「処置」の項目に移され(これは非常に問題であると思っていますが、ここではその議論はしません)、赤外線、紫外線療法などと同じく皮膚科処置の一項目と位置づけられました。
その際に、皮膚レーザー照射療法の実施上の留意事項として、様々な制限が加えられました。
- 単なる美容目的の照射は算定不可
- 3ヶ月を単位として、その間に1回だけ算定可能
- レーザー機器と病名との紐付け(対応していないものは算定不可)
- 病変の部位の数え方
- 治療の回数の制限
それぞれに問題の多い制限ですが、特に「3ヶ月」問題と今回2012年度に新たに明確な形で導入された回数制限は、医師の治療方針を左右する重要な制限です。知らない患者さんも多いので簡単にここで見てみます。
皮膚レーザー照射療法は、単なる美容を目的とした場合は算定できない
<編集中>
「一連の治療」とは所期の目的を達するまで概ね3月間にわたり行われるものをいう
<編集中>
〇〇レーザー照射療法は、△△症に対して行なった場合に算定する
<編集中>
頭頸部、左上肢、左下肢、右上肢、右下肢、腹部又は背部の部位ごとに算定する
<編集中>
同一部位に対して初回を含め○回を限度として算定する
<編集中>
太田母斑とその類症(顔の青あざ)
太田母斑は主に額から目の周囲、頬にかけての青あざで、通常は生まれつき色があり、原則的に片側ですが、両側に出ることもあります。
→ ルビーレーザーのよい適応で、保険治療の適応になっています。数回の治療でかなり改善します。根気よく回数を重ねることにより、ほとんど消すことができますが、場所によって消えにくさが違い、目の周囲などは長期間の通院が必要となります。
遅発性太田母斑様色素斑といわゆるADM(後天性真皮メラノサイトーシス)について
肝斑と混同されて美白剤やエステなどで治療される事が多い疾患ですが、肝斑とは症状が異なり、見慣れた医師であれば診断がつくことが多いです。
早い人で思春期から、多くは30代頃に初発し、主に頬に点々と灰褐色の色素斑が増えてきます。太田母斑は通常片側ですが、遅発性太田母斑様色素斑は両側に同時に出るのが特徴的です。 → ルビーレーザーのよい適応です。数回の治療でかなり改善します。根気よく回数を重ねることにより、ほぼきれいに消すことができます。
最近一般的になってきたADMという病名は、小鼻に生じたり鼻根部、額、下眼瞼に斑状に現れる後天性の色素斑を含むより広い疾患名で、必ずしも先天性の素因があるとは限らないものも含まれているようです。
保険治療が可能かどうかは症状によります。大江橋クリニックでは、ADMという病名は使用していない為、他院でADMであると言われた、という場合でもまず診察して治療方針をお話ししています。
異所性蒙古斑(体の青あざ)
東洋人に多いおしりの青あざと同じものが、体の他の部位にできたもので、おしりと違い大人になっても消えないことが多いので、通常は子供のうちに→ レーザーで治療します。レーザー後に色素沈着を来しやすく、治療期間は比較的長くなりますが、数回の治療でかなり薄くなります。
扁平母斑(茶あざ)
平らな薄いあざで、いくつかのタイプがあり、中には再発しやすいものもあります。現時点では治療が難しいあざの一つですが、初回を含め2回までは健康保険で治療することができます。
外傷性色素沈着症
転倒してできた擦り傷の中にアスファルトの粉などが残り、青黒い刺青のようになったものです。→ レーザー治療のよい適応で、繰り返す事によりほぼ完全に取り除くことができます。
*色素性母斑(黒あざ)
平らな大きな黒子の様な黒あざです。レーザー治療も可能ですが、現在のところ健康保険の適応にはなっていません。大きなものは切除やドライアイス治療、いくつかの種類のレーザーを組み合わせて治療します。手術がもっとも確実ですが、ある程度の傷が残ってしまいます。